パイオニアは同社のテラヘルツスキャナーが,2月29日から3月2日にかけて奈良文化財研究所により行なわれた高松塚古墳壁画の保存状態調査において活用されたと発表した(ニュースリリース)。この調査において国内メーカーのテラヘルツスキャナーが採用されるのは,今回が初。
奈良県の飛鳥歴史公園内にある高松塚古墳は,7世紀から8世紀初頭にかけて築造された円墳で,古墳内部の石室に描かれた女子群像をはじめとする色彩鮮やかな壁画で知られている。1972年の発掘以降,現地保存されていた壁画に,雨水の侵入やカビの発生などによる退色・変色が見られたほか,剥落の可能性もあることから,石室を解体し,場所を移しての保存修復作業が2006年より行なわれている。
“テラヘルツ波”は,布や紙,木,プラスチック,陶磁器を透過する一方,金属や水は透過しない,光と電波の特性を兼ね備えた電磁波。その特性を活かした同社のテラヘルツスキャナーは,小型で軽量な本体部とヘッド部,高精度なスキャンメカニズムで構成されており,さまざまな大きさや形状の壁画を計測することができる。今回の調査でも壁画が描かれている漆喰層内部の透過像を正確に取得し,壁画の劣化状況を確認した。
同社のテラヘルツスキャナーは,昨年行なわれた愛知県美術館に所蔵されている「木村定三コレクション<黒漆厨子>」の内部構造計測でも活用された。同社は,このような文化財の計測のほかに,一般建造物の剥離確認用途やセキュリティ用途など,テラヘルツ波を有効に活用できるさまざまな用途の検討を進めている。
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