北大,レーザー共焦点顕微鏡で氷表面の水膜を観察

北海道大学は,原子・分子高さの段差を可視化できるレーザー共焦点微分干渉顕微鏡を用いて,様々な水蒸気圧下で氷結晶表面を観察した。その結果,2タイプの擬似液体層は,氷結晶表面が融けてできるのではなく,過飽和な水蒸気が氷結晶表面に析出することでできることを解明した(ニュースリリース)。

氷結晶の表面は融点(0℃)以下の温度でも,擬似液体層と呼ばれる薄い水膜で覆われている。この現象は「表面融解」と呼ばれ,スケートの滑りやすさや復氷,霜柱による凍上,雪だるまの作製,雷雲での雷の発生など,寒冷圏での生活と密接に関連した幅広い現象の鍵を握ると考えられており,擬似液体層が生成する機構を解明することは極めて重要となる。

融点以下の温度で氷が表面融解することは,これまで様々な光学的手法によって観測されていたが,ごく最近まで直接可視化することはできていなかった。最近,同大とオリンパスが共同で開発した光学顕微鏡を用いることで,氷結晶表面の擬似液体層を直接可視化できるようになった。その結果,形状が異なる2タイプ(薄い層状と液滴状)の擬似液体層が存在することなどがわかってきた。

共同開発したレーザー共焦点微分干渉顕微鏡を用いると,氷結晶表面の水1分子高さ(0.37nm)の段差を直接可視化できる。この光学顕微鏡を用いて,融点直下(-2℃~0℃),様々な水蒸気圧のもとで成長する氷結晶(雪結晶)表面を観察した。

高過飽和な水蒸気中では,層状と液滴状,両タイプの擬似液体層が生成する。しかし,水蒸気圧が低下するとともに,まず層状の擬似液体層が消滅し,次いで液滴状の擬似液体層が消滅することが今回新たにわかった。

また,低過飽和及び平衡な水蒸気中では,氷結晶表面には擬似液体層は生成しなかった。すなわち,擬似液体層は,氷結晶表面が融けることで生成するのではなく,氷結晶表面に過飽和な水蒸気が析出することで生成することがわかった。

擬似液体層が生成する現象はこれまで長らく「表面融解」と呼ばれてきたが,そのような呼称は実体を表していないことになる。さらに,これまでは水蒸気が平衡であるか過飽和であるかに関わらず,擬似液体層は氷表面に安定に存在すると考えられてきたため,今回の研究成果は,従来の擬似液体層の描像を根幹から修正する必要があることを示しているという。

この研究により得られた擬似液体層についての新たな知見は,スケートの滑りやすさから雷雲での雷の発生まで擬似液体層が重要な役割を果たす幅広い現象の秘密を解き明かす鍵を握るとともに,様々な結晶材料で見られる融点直下での超高温表面・界面現象の解明に役立つとしている。

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