東京工業大学,東京大学らの研究グループは,生体が形づくられる際に不可欠な細胞死の詳細なメカニズム解明に成功した(ニュースリリース)。
四肢の発生過程で, 発生過程の様々なプロセスで働く分泌性シグナルタンパク質「BMP」により制御されるAP-1 転写因子(核内で DNAに結合して,標的遺伝子の発現調節に関わるタンパクの総称)「MafB」が,ほかのどのAP-1 転写因子と結合して二量体を形成するかによって,四肢の細胞が死ぬか,生きるかの運命が決められていることを突き止めた。
体の形がつくられる際には,適切な場所で,適切な量の細胞が自主的に死ぬ 細胞死 によって,器官や組織の形が適切に調整されている。四肢の発生過程では,手首や指の間で細胞死がおこること,そして四肢の細胞死は,細胞死をおこす領域に特異的に発現している BMPによって制御されていることはよく知られていた。
しかし,BMPの下流で,どんなメカニズムで細胞死が制御されているのかは,これまでほとんど明らかにされていなかった。 今回の研究により,AP-1 転写因子の二量体のパートナーの組み合わせによって異なる標的遺伝子が制御されるシステムが,器官の形成過程における“細胞死”の制御にも使われていることが初めて明らかとなった。この成果によって,様々な器官や組織の形成過程で働く細胞死のメカニズムの理解につながると期待される。