産総研、透明時の可視光透過率が70%以上の調光ミラーを開発

産業技術総合研究所サステナブルマテリアル研究部門環境応答機能薄膜研究グループ主任研究員の山田保誠氏らは、透明状態での可視光透過率が70 %を超える新しい調光ミラーを開発した。(ニュースリリース

鏡状態と透明状態を切り替えることができる調光ミラーを用いた窓ガラスは、透明な複層窓ガラスに比べると夏場に高い冷房負荷低減効果があり、鏡状態と透明状態の切り替えの繰り返し耐久性が実用に足る調光ミラー材料や安全なスイッチング方式が開発され、早期の実用化が期待されている。

産総研では,2002年から調光ミラー用薄膜材料の研究開発に着手し,マグネシウム・ニッケル合金を用いた実サイズの調光ミラー窓ガラスを作製し,通常の透明な複層窓ガラスと比べて30 %以上の冷房負荷低減効果があることを実証した。

しかし,この調光ミラーは,窓ガラスに応用するには鏡状態と透明状態間の切り替えの繰り返し耐久性が不十分であったため,10000回以上の切り替え耐久性をもつマグネシウム・イットリウム系合金を用いた調光ミラーを開発した。

ところが,この調光ミラーの透明状態での可視光透過率は,最高で約 55 %であり,南に近い方角に面した窓に用いた場合,夏場の冷房負荷の低減量より,冬場の暖房負荷の増大量が多く,年間の冷暖房負荷が増加することがわかった。さらに,自動車のフロントガラスへの応用も考え,透明状態での可視光透過率が70 %以上の調光ミラーの開発を目指した。

今回開発した調光ミラーは、繰り返し耐久性の高いマグネシウム・イットリウム系合金を用いた調光ミラーの表面に適切な反射防止層をコーティングすることで、透明状態での可視光透過率を70%以上に向上させた。この反射防止膜つきの調光ミラーを、酸素を含まず水素を含んだ雰囲気にさらすと透明状態に変化し、逆に水素を含まず酸素を含んだ雰囲気にさらすとまた鏡状態に戻る。

これにより、道路運送車両の保安基準上、自動車のフロントガラスに要求されている透過率の条件を満たせることから、開発した調光ミラーを自動車内空間の温熱制御のために窓ガラスへ応用できる可能性が示された。