原研、放射性セシウムの特殊な吸着挙動を解明

日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター上級研究主席の大貫敏彦氏らは、放射性セシウム(Cs)が従来考えられていたイライトなどの粒の細かい粘土鉱物だけでなく、カオリナイトやバーネサイトなどの粒度の比較的大きな鉱物にも強く吸着することを見いだした。

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東京電力福島第一原子力発電所事故により降下した放射性Csは、表層付近の土壌中に留まっており、水などにより洗い流すことが難しいことが知られている。これは、放射性Csが土壌中のイライトなど小さい粒径の粘土鉱物に強く吸着しているためと考えられていた。しかし、ふるい分けなどにより粘土鉱物を多く含む細粒部分を除去しても、まだ大部分の放射性Csが残っているケースもあり、その理由は不明だった。

鉱物には吸着した放射性Csの安定さが異なる、いくつかの場所(以下「サイト」という)が存在する。自然の環境では降水などにより鉱物の変化(風化)が進むため、鉱物結晶に構造の乱れが生じ、ここに放射性Csを安定に吸着するサイトが生じる。イライトに比べカオリナイトやバーネサイトは、構造の特性から吸着サイトの数は極めて少ないと考えられるが、それにも関わらず多くの放射性Csが安定して吸着している。大貫氏らは、土壌中の放射性Csの濃度が他の代表的な微量元素の濃度に比して極めて低いため、その吸着挙動が他の元素と大きく異なることが、この特殊な吸着の理由であることを初めて突き止めた。

放射性Csがどのような鉱物にどのように吸着しているかを明らかにしたことで、除染を行う地域の土壌に含まれる鉱物の種類と粒径によって、どの程度の粒度まで除去すればよいかの判断基準を与えることができ、より効果的な除染を行うことが可能となる。

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