近年、糖尿病がアルツハイマー病を含む認知症の危険因子となることが報告され、その結果認知症高齢者が増加している可能性が示唆されている。しかし、なぜ糖尿病がアルツハイマー病の危険因子となるのかその分子メカニズムはよく理解されていなかった。
九州大学生体防御医学研究所主幹教授の中別府雄作氏らの研究グループは、九州大学で50年間にわたって継続されている久山町研究の献体の死後脳を用いて遺伝子発現プロファイルを調べた
その結果、アルツハイマー病患者脳では、アミロイドβ産生や神経原線維変化ではじまるアルツハイマー病特有の病理変化により、脳内のインスリン・シグナリング系が破綻していることを発見した。
インスリン・シグナリング系が破綻したアルツハイマー病患者の脳は代謝障害や炎症反応に起因する様々なストレスに対して著しく脆弱となる。このような状況下で末梢のインスリン抵抗性または糖尿病を発症すると、さらにアルツハイマー病の病態が悪化し、その進行が促進されることになる。
これらの成果により、脳内インスリン・シグナリング系を新規の分子標的とした認知症の治療薬の開発が可能となる。
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