東大,mRNAの中枢神経系への安全な送達・機能発現に世界で初めて成功

東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻/東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター臨床医工学部門教授の片岡一則氏と,特任准教授の位髙啓史氏の研究グループは,高分子ミセル型ドラッグデリバリーシステム(DDS)を用いた,mRNAの中枢神経系への安全な送達・機能発現に世界で初めて成功した。

mRNAは神経細胞で効率よく目的とするタンパクを産生させる機能を持ち,新しい核酸医薬として治療への応用が期待されるが,一方でmRNAは極めて不安定で,生体内では急速に分解されてしまうこと,また自然免疫機構を刺激して,生体内で強い炎症反応を引き起こすことから,これまで治療への応用例は殆ど無かった。

研究グループは,mRNAを内包させた高分子ミセルを脳脊髄組織へ投与することにより,5日間に渡る持続的なタンパク発現に成功。このmRNAによる長期持続性機能発現における高分子ミセルの働きとして,mRNAを安定に保持することに加え,自然免疫機構に認識されることを防ぎ,炎症反応の発生を抑えることを明らかにした。

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このシステムによる安全・実用的なmRNA送達の実現により,アルツハイマー病,脊髄損傷といった難治性の中枢神経疾患・外傷に対して,画期的な新規治療法の開発に繋がることに期待ができる。

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