企画展では,鉢に水をはった水鏡,大陸から伝わった前漢時代の銅鏡に続き,それが日本独自の様式にアレンジされて平安時代に確立された「和鏡」,そしてそれが信仰対象から実用品へと変遷し,江戸時代に至るまでの歴史が見られる配置となっていて,その最後のコーナーに魔鏡が展示されていた。
魔鏡というのは,一見ただの鏡なのだが,太陽光などの光を反射投影すると,反射光の中に肉眼では見えなかった像が出現するというものだ。「魔鏡」という言葉からは,なんだか呪いにかけられているような,どちらかと言えば「闇のもの」という印象を受ける。
実際,「魔」というのは仏教の「マーラ:修行を妨げるもの」が語源であり,人を殺したり善行を妨げる悪いものという意味として使われる言葉なのだ。しかし,実際に魔鏡で出現させていたものは,阿弥陀様だとかマリア様だとかのありがたい姿であって,敬虔な祈りの対象に使われていたらしい。だったら「霊鏡」とか「仏鏡」とか「神鏡」とか,もっとありがたそうな名前にしておけばよかったのにと思ってしまう。
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