レーザ加工の基礎の基礎【5】 穴あけ⑴

著者: 門屋 輝慶

3. 穴あけ

レーザビームは,材料に触れることなく,金属,プラスチック,紙,そして石にも,微細な穴から比較的大きな穴まであけることができる。レーザ穴あけは,1960年代の比較的初期のレーザ応用として,時計の歯車の軸受けとしての宝石への穴あけや,金属線の伸線加工に使用するダイアモンドのダイスの穴あけとして登場した。その後,航空機のエンジンのタービンブレードの穴あけとして開発された。1990年代の後半から,新たな応用として,エンジンのインジェクションノズルの穴あけや,包装用の穴あきフォイルなどに使われてきた。

このレーザ穴あけの項では,一般的なレーザ穴あけの技術の紹介に加えて,プリント基板へのレーザ穴あけ,極短パルスレーザによる微細穴あけ,タービンブレードの穴あけ,自動車のフロントパネルへの炭酸ガスレーザによる穴あけ,および木材への穴あけについても紹介する。

3.1 穴あけの原理

レーザ穴あけにおいては,材料の溶融や蒸発を引き起こすために,高出力密度の極短パルスレーザビームによって,被加工材にエネルギーが供給される。パルスエネルギーが高ければ,それだけ材料が溶融し蒸発しうる。

蒸発は,加工穴の中で材料のボリュームを急激に増大させ,高圧を引き起こす。蒸発圧力は穴から溶融金属を排出する。スパッタや蒸気は,穴の底部から光学系がある上方へはじき出される。レーザビームが,穴あけしている材料の下に突き抜けると,スパッタや蒸気は,穴の下部から排出される。スパッタや蒸気の加工光学系へのダメージを防止するために,レーザ穴あけ装置は,材料と加工光学系の距離をできるだけ大きくとるように設計される。レーザビームと同軸のノズルからガスを吹き付けることによって,加工光学系へのダメージを防いでいる(図1)。

図1 穴あけの原理
図1 穴あけの原理

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