超スマート化社会にはエネルギー源が重要
―レーザー学会では2022年に提言書『2050年カーボンニュートラルへのレーザー技術の貢献』を発表されていました
カーボンニュートラルに関しては,経済の側面と環境面のバランスの中で,いくつもの課題があると思います。その一つに超スマート化社会を実現するという課題が挙げられています。超スマート化社会の実現は久間和生前会長が提唱されたものですが,現在指摘されている問題は電力の不足です。

それを顕在化させた一つがAIです。老若男女問わずにAIが使えるようになって急激に母数が増え,エネルギー政策が見直されています。超スマート化社会を実現するうえではエネルギー源の確立が目標となりますが,言い換えれば,安定したエネルギー源による供給の先に真の超スマート化が待っていると思います。
―まさに先生のご専門でいらっしゃるパワーレーザーが活かせるのではないかと考えられます
そこに話が及ぶと手前味噌になるのですが(笑),しかしエネルギーがないと,産業革命は起きないはずです。超スマート化というのはある意味で産業革命と言えますので,本気でエネルギー源を考えないと,省エネルギーだけでは絶対に済まないような話になってきているのが実状です。エネルギーを作り出すという点ではレーザー核融合しかり,その他の光技術というのが有用になってくるのではないかと思います。
汎用性のあるレーザーが本来の姿
―レーザー技術の可能性,さらにはレーザー学会の将来についてお聞かせください
レーザーというのはコヒーレントな光で,フォトンです。フォトンというのは宇宙の力の中の,要するに重力,核の力,それから電磁力を伝える粒子です。そういった意味では力を伝える素粒子を完璧に制御できているのがレーザーなんです。ということは,レーザーは力の素だと考えることができます。その力はレーザー加工であったり,センサーなどであったり,そこにAIも取り入れていけば新しい道具として使うことができます。
レーザーは今,色々な分野で普及し始めています。自動車やスマートフォンにも使われていますし,特別なものではなくなってきています。ですから,レーザーだからできる世界というのを学会としても示していければと思っています。レーザー学会はレーザー技術に焦点を絞りつつ,非常に汎用性がある一方で,レーザーを使った極限の世界であったり,レーザーを使った先鋭的な分野もあります。汎用性と先鋭性を兼ね備えたレーザーを見ている学会としては,思った以上に大きくなり得る可能性があると思っています。
例えば,その一環として国際会議であるOPIC(OPTICS&PHOTONICS International Congress)が大きくなっていることが表していると思います。ただ学会を大きくすれば良いという問題ではないですが,例えば,宇宙など新しい分野にまで広げていくことができればと思っていて,それでより汎用性のあるレーザーというものが本来の姿の学会にできたらなというのが将来の夢としてあります。
(月刊OPTRONICS 2025年6月号 Human Focus「レーザーで実現する未来の可能性」)