【解説】新型太陽電池,光電変換効率を向上へ

全有機材料のフィルム型太陽電池の研究は,環境負荷の低減と高効率化を目指して進展している。こうした中,金沢大学,麗光,カナダのクイーンズ大学の研究チームは,PEDOT:PSSをベースとした透明電極の開発とカーボンナノチューブ電極のラミネーション法を活用し,従来の2倍以上の光電変換効率を達成した。

この分野では,他にもペロブスカイト太陽電池や有機薄膜太陽電池の研究が活発である。例えば,神戸大学では自己修復型光触媒を活用したペロブスカイト太陽電池の開発が進められており,東北大学ではSnS薄膜太陽電池の組成と性能の関係を解明する研究が行なわれている。また,豊田合成はペロブスカイト太陽電池を衣服に組み込む技術を開発しており,ウェアラブルデバイスへの応用が期待されている。

全有機太陽電池は,従来のシリコン型太陽電池と比べて環境負荷が低く,廃棄が容易であるため,農地や水源地などの環境保全が求められる場所での活用が期待されている。今後はさらなる効率向上と低コスト化が課題となり,より実用的な技術へと進化していくと考えられる。(月刊OPTRONICS編集長 三島滋弘)