代表取締役就任と『OPTICEL』ブランドの確立
―代表取締役社長に就任された時期は?
父から受け継ぎ,社長の職に就いたのは2022 年です。私はというと,専門は医学でして日本では放射線医療を学びました。それから中国語を一年間猛勉強して,上海交通大学医学院に入学。中国で医師免許を取得しました。

そのまま中国で医師の道へと進むことも考えましたが,小さい頃から慣れ親しんだ鋳物やレーザーをやりたいと思い,家業を継ぐ決断をしました。社会人経験がないので,以前から大変親しい関係の中西電機工業㈱で産業用向け制御装置の営業を行ない,1年間修行をさせていただきました。そして,レーザックスに戻り,経営とレーザー技術について学んでいきました。よりレーザー技術を深く理解するために光産業創成大学院大学(以下,光創成大)にも入学しまして,現在も通っています。
医学の経験を活かしたということでは,光創成大で知り合いました浜松医科大学の中川雅裕先生の事業のお手伝いをさせていただいたことです。何かというと,レーザーを用いたリンパ管再生手術システムにおけるレーザー加工ヘッドの開発です。事業化の段階までには至りませんでしたが,これは良い経験でした。
また,これは5 年前に終了したプロジェクトなのですが,㈱RYODENと信州大学と共同で,フェムト秒レーザーを活用した撥水加工技術の開発も行ないました。製品の性能向上や環境負荷低減という観点から,素材の表面に機能的なテクスチャを施す加工法があります。我々が取り組んだのは照射角度が限定されていた従来の加工法(順テーパー加工)ではなく,照射角度を制御できる逆テーパー加工制御技術の開発です。
―御社独自の製品について教えてください
弊社では『OPTICEL』ブランドとして製品をラインナップしています。先ほどの事業の強みでも紹介しましたが,これまで請け負ってきた加工から独自のブランディングビジネスに転換させることを狙ったものです。まずはレーザー加工ヘッド。軽量・コンパクトであるのが売りの一つですが,最近では銅加工が増えてきており,高出力可視光レーザーと近赤外線(IR)レーザーを組み合わせたハイブリッドレーザーの開発も進んでいます。これに対応した加工ヘッドを製品化しました。この加工ヘッドにはより高い加工品質を実現するため,レーザービームを回転させるワブリング機能も搭載されています。
溶接機としましては,ハンドトーチ型ファイバーレーザー溶接機を『OPTICEL FHシリーズ』 として製品化しています。ステンレス系やアルミなどの材料毎に応じた溶接機をラインナップしています。ボタンを押すだけでトーチからレーザー光が出射するというもので,手持ちで溶接を可能にする装置です。
ただし,この溶接機の普及に向けては課題があります。それは安全性を担保するということです。現在,中国製のハンドトーチ型溶接機が数多く市場に出回っていますが,その大半は誤照射などを防止するインターロック機構が搭載されていないようです。
この溶接機を動作させるためには,必ず保護・遮光メガネをつける必要があり,作動・停止させるためのフットペダルなども搭載する必要があります。保護メガネの装着有無は,センサーによって認識されるので,当然ながら付けていなければ溶接機は作動しません。
実はいま,日本溶接協会のLMP委員会(レーザ加工技術研究委員会)でインターロック機構がない製品が出回っていることが問題視され,安全に関する規格づくりが進んでいます。私はこの委員会の幹事として参画しているのですが,実際の使い方や安全周知のための講習会の実施も考えられています。