競争的資金制度である,科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)と日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業は,2019年度における戦略目標(6件)と研究開発目標(1件)を次のとおり決定し,研究課題の公募を開始した(ニュースリリース)。
【戦略目標】(JST向け)
○ナノスケール動的挙動の理解に基づく力学特性発現機構の解明
○最先端光科学技術を駆使した革新的基盤技術の創成
○量子コンピューティング基盤の創出
○数理科学と情報科学の連携・融合による情報活用基盤の創出と社会への展開
○次世代IoTの戦略的活用を支える基盤技術
○多細胞間での時空間的な相互作用の理解を目指した技術・解析基盤の創出
【研究開発目標】(AMED向け)
○健康・医療の質の向上に向けた早期ライフステージにおける分子生命現象の解明
このうち「最先端光科学技術を駆使した革新的基盤技術の創成」は,物質の操作・制御や機能創出,生命の観察や治療,高速情報処理等に最適な光源や必要な光科学技術を特定し,その開発及びそれを用いた基盤技術を開発し,超スマート社会(Society5.0)の実現に貢献するとしている。
そのためには,物質科学,生命科学,情報科学等の分野と光科学技術の分野の研究者が密接に連携し,必要となる光科学技術の特定と開発を通じた革新的な光科学技術基盤の創成を目指すとし,以下の4つの達成目標を掲げた。
(1)光特性を活かした物質・材料の操作・制御・機能創出
例・高度な光波形制御技術を用いた光電場(磁場)駆動現象の研究
・光パルスを用いた化学反応の制御,凝縮系の光操作等,物質構造の変調に関する研究
(2)光特性を活かした生命の観察・治療技術の創出
例・複数種類の分子の挙動を同時に識別可能な新規イメージング技術の開発
・広い視野において分子レベルの分解能を有する生体計測技術の開発
・光駆動のコヒーレントフォノン等の光技術の利用による生体深部観察や非侵襲治療を可能とする基盤技術の開発
(3)情報処理の光への利用/光の情報処理への利用
例・情報処理を能動的に組み込んだ新しい光センシング・イメージング技術の開発
・AI等の情報処理技術を積極的に活用した新しい光学素子・光学システムの創出
・光の特性を活かした高速なコンピューティング手法とこれに基づいた集積光デバイスの開発
(4)光要素技術の開発
例・時空間コヒーレンス,光電場波形,偏光制御等,光を自由自在に精密に制御する光技術の開発
・光源の高出力化や新規波長展開・波長域拡大,高耐力光学素子に関する研究開発
・オンチップ半導体レーザー,エレクトロニクス集積等による超小型機能光源の開発
・高次元揺らぎ場の計測可能なセンサーや高感度波長展開等,光の高度利用に向けた受光・センシング技術の開発
・光の相互作用を利用した量子計測技術の開発
JSTとAMEDでは,新興・融合分野の開拓に貢献し得る,より多くの優れた提案を期待するとしている。
(参考)スケジュール(予定)
・4月上旬~6月上旬 研究課題の公募
・6月中旬~9月中旬 研究課題の選定
・10月上旬(予定) 研究の開始