研究グループではさらに,有機光検出ダイオード(有機PD)を極薄高分子基材に形成し,有機LEDを集積化する技術も開発した。緑と赤の有機LEDを有機PDと集積化した極薄デバイスで,超柔軟フォトニックスキンと呼ぶ。これを指の先端に巻きつけ,血中の酸素濃度を反射型の配置で計測実験を行なった。この結果,心拍数や血中酸素濃度(測定範囲は90~99%)を1分以上にわたって計測することに成功した。
今回発表されたデバイスの応用はヘルスケア,医療・福祉,スポーツ,ファッションなど多岐にわたることが想定されている。例えば,有機光センサーを肌に貼り付け,血中酸素濃度や脈拍を計測し,その測定結果をリアルタイムに腕に貼り付けたセグメントディスプレイに表示するという応用だ。
スポーツ用途では,ランニングなどの運動中のモニタリング,医療・福祉用途では患者の健康状態を把握することができるようになる。産業用途では,例えば,工場などの作業員の手の甲にデバイスを貼り付けることで,そこに作業マニュアルを表示させるといった応用も期待できるとしている。また,ファッションやコミュニケーションツールとしても,その応用の可能性は広がりそうだ。
今回開発した技術の実用化に向けては,高精細ディスプレイを可能にするため,アクティブマトリックスとの集積化と,さらにディスプレイへの電力供給と駆動回路の実装技術の開発が挙げられている。染谷氏によれば,今後こうした課題を解決し,実用化に向けるが,「単純なセグメントタイプのものは2020年の東京オリンピック前後の実用化を目指す」としている。今後の研究・開発の動向が注目されるところだ。◇
(月刊OPTRONICS 2016年6月号掲載)