2030年の有機エレクトロニクスデバイス市場は2012年比12倍の7兆1,554億円に

富士キメラ総研は,2013年3月から5月にかけ,フレキシブル化やプリンテッド化の中核部材として注目される有機エレクトロニクスデバイスとその材料の世界市場を調査し,その結果を報告書「2013 有機エレクトロニクス関連市場総調査」にまとめた。

この報告書では有機ELディスプレイ(大型AMOLED,中小型AMOLED,PMOLEDに分類),有機EL照明,有機TFT,有機メモリー,有機薄膜太陽電池,色素増感型太陽電池,有機二次電池といった有機エレクトロニクスデバイス9品目をはじめ,フレキシブル化や大面積化の実現に向けて需要の高まりを見せている新規材料(有機・機能材料,基板,封止材料,導電・配線関連部材,光学フィルム部材)23品目の市場についても調査し,最新技術動向や将来を展望した。

■調査結果の概要

1. 有機エレクトロニクスデバイスの世界市場

2012年 2030年予測 12年比
5,888億円 7兆1,554億円 12.2倍

2012年の有機エレクトロニクスデバイス市場は5,888億円となった。この時点では大型AMOLED,中小型AMOLED,PMOLED,有機EL照明,有機TFTが市場を形成しているが,全体市場の大半は中小型AMOLEDが占めている。

2013年は,有機ELテレビの投入によって大型AMOLED市場の拡大が見込まれる。大型AMOLEDは,中小型AMOLEDと構造が異なることから,新規材料の需要の増加も期待される。また,有機EL照明も照明器具としての製品化が始まったこと,有機EL照明器具の研究開発が活発化していることによるR&D用途が増加しており市場拡大が見込まれる。

しかし,市場の本格化は2015年以降と予測される。これらディスプレイと照明は他の有機エレクロニクスデバイスに先行して市場拡大が続く。

長期的に見てもディスプレイと照明(特にAMOLED)の全体市場に占める比率は高いが,有機系太陽電池,有機TFT,有機メモリーなどが2020年以降,市場開拓が進み拡大し始めると予想される。全体市場は,2030年には2012年比12.2倍の7兆1,554億円と予測される。

■有機エレクトロニクスデバイスのフレキシブル化の動向  ■主なデバイスのフレキシブル化率(数量ベース)

2012年 2030年予測
有機TFT 100.0% 100.0%
中小型AMOLED 0.0% 69.0%
大型AMOLED 0.0% 29.4%

有機TFTは基本コンセプトがフレキシブル化が可能なTFTであるため,全ての製品がフレキシブルデバイスとなる。既に実績のある製品は、PET基材をベースとしている。  中小型AMOLEDは,Samsung Display,LG Displayがフレキシブル化の開発を精力的に進めており,2013年末頃に製品投入が期待される。

両社とも “UnBreakable(割れにくい) Display”をコンセプトに掲げ,Samsung Displayはスマートフォンやタブレット向けに,LG Displayはスマートウォッチ向けに2~3インチ台の小型サイズでのフレキシブル化を進めている。

大型AMOLEDはテレビ向けで薄型・軽量化を目的としたフレキシブル(フィルム基板)ニーズが高いものの,ガラス基板上での生産技術が整っていない状況にあるため,フレキシブル化は2020年以降と予想される。将来的には「Rollable Display」や「Wall Display(壁一体型ディスプレイ)」といったテレビとは異なる大型スクリーンの登場が期待されるが,新たなフレキシブル対応部材の採用が必要と見られる。

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