水底の線香花火 子供の頃は,風呂なんて好きではなかった。それなのに,今ではどうだろう。どんなに暑い日でも,シャワーではなく風呂に入りたい。湯船に入るときには「ふぅー」とか「はぁー」とか声を出し,心の中で「いやいやいや…」と訳の分から […] 2020年09月01日 ひかりがたり ひかりがたり 第90話 著者:月谷昌之介
写真 ─ 真を写す? ─ 自宅の僕の部屋の片隅に日本の有名な靴メーカーR社の紙箱がある。箱の中には,僕が大学生だった頃の写真が放り込まれている。僕は時々箱を開けて何枚かの写真を眺めてみる。浦島太郎は玉手箱を開けた瞬間に老人になってしまったが, […] 2020年08月03日 ひかりがたり ひかりがたり 第89話 著者:月谷昌之介
神秘なるプリズム 子供の頃,友達のお兄さんがプリズムというものを持ってきて,僕たちに見せてくれた。僕には,それはガラスの塊をえいやと叩きつけて割れ落ちた,ただのかけらのように見えた。 しかし,そのかけらの中を覗いてみると,見えるはずの […] 2020年07月07日 ひかりがたり ひかりがたり 第88話 著者:月谷昌之介
遥かなる地平線 僕が今暮らしている街は,四方を山と丘に囲まれた盆地の中にある。山を眺めながら暮らそうと選んだ場所なので文句は言えないが,ときどき窮屈に感じて,地平線が見えるような平原に住めばよかった,などと,今更なことを思うこともあ […] 2020年07月07日 ひかりがたり ひかりがたり 第87話 著者:月谷昌之介
内視鏡こわい まだ社会人になって間もない20代の頃,同期と酒を飲んだ翌日,二日酔でムカムカしながら咳をしたら,ほんの少しだけれども口を抑えたティッシュに血がついていた。慌てて病院に行ったら,後日,内視鏡で胃の検査をすることになった […] 2020年07月02日 ひかりがたり ひかりがたり 第86話 著者:月谷昌之介
いまさら枯れ草色 八方尾根にスキーに行くことが僕にとっては毎年の恒例だ。何度行っても斜面は手ごわくて,それだからこそ,決して飽きることがない。 白馬三山や五竜岳などの北アルプス後立山連峰の景色も圧倒的だ。さらに,スキー場の麓には温泉が […] 2020年07月02日 ひかりがたり ひかりがたり 第85話 著者:月谷昌之介
音に色? 世の中には音を聞くと色が見える人がいるらしい。例えば,ドの音で赤が見え,レの音で緑が見える,などというものだ。それも,「なんだか色を感じる」なんていうものではなく,本当に色が見えるのだという。 これは共感覚と呼ばれている […] 2020年05月27日 ひかりがたり ひかりがたり 第84話 著者:月谷昌之介
はるかなる蜃気楼 先日,出張で琵琶湖畔の長浜を訪れた。宿泊先のホテルで早く目が覚めてしまったので,僕は,そのホテルから電車で一駅の出張先まで,朝の湖畔沿いの道を歩いて行くことにした。その日の朝は急に冷え込んでいて,湖から吹き付ける風に震え […] 2020年05月25日 ひかりがたり ひかりがたり 第83話 著者:月谷昌之介
魔鏡魔境 ふと目にしたチラシに,鎌倉歴史文化交流館というところで行われている「和鏡~水鏡から魔鏡まで」という企画展の案内が出ていた。土曜日限定で専門家による魔鏡のデモがあるという。これは見逃す訳にはいかないと,僕は愛車のスーパーカ […] 2020年04月10日 ひかりがたり ひかりがたり 第82話 著者:月谷昌之介
ボックスカメラの空洞 ポーランドの古都クラクフでは,毎週日曜日に蚤の市が開かれる。旧市街から少し歩いた場所のアーケードとそれを囲む広場に,多くのにわか店舗が出現する。古本,食器,服,家具などアンティークの他,電化製品,家のガラクタを持ってきて […] 2020年03月02日 ひかりがたり ひかりがたり 第81話 著者:月谷昌之介