3Dプリンタの実力は如何に?

注目は金属粉末を利用した直接造形

レーザ光源と装置の進化により金属直接造形に対する応用の可能性が飛躍的に高まっている。アルミやステンレス,インコネル,コバルト,チタニウムなどの造形に対応する金属粉末材料が開発されているが,ダイレクトに金属造形することができれば最終製品への適用が可能となる。

しかし,それでも3Dプリンタには寸法精度や形状精度,表面粗さなどが発生するといった共通課題がある。これを解決するものとして,松浦機械製作所が開発したのはレーザで造形した10層に1回ごと,マシニングツールを用いて切削を繰り返しながら積層する複合装置だ(写真7)。

写真7 松浦機械製作所のレーザ造形とマシニングツールを一体化した金属光造形装置
写真7 松浦機械製作所のレーザ造形とマシニングツールを一体化した金属光造形装置

レーザはイギリスSPIレーザ社製のファイバレーザを採用しているが,金属粉末を焼結・溶融する積層造形装置ではファイバレーザの搭載が主流となっている。ファイバレーザはシングルモードであれば,集光スポットを細く絞ることができるため,微細造形を可能にする。

粉末焼結積層造形装置を製品化しているアスペクトはファイバレーザを用いた造形技術の研究・開発を行なっているが,ICソケットの端子部の線形状を0.2mmに造形している。

写真8 アスペクトの粉末焼結積層造形装置
写真8 アスペクトの粉末焼結積層造形装置

また,同社はチタン合金を材料に用いたAM技術の開発にも取り組んでいる。製品化している装置はCO2レーザを搭載するもので(ファイバレーザの搭載はオプション対応),ナイロンとガラスビーズ,ナイロンとカーボンファイバーなど複合材料に対応している(写真8)。

金属粉末積層造形装置について海外メーカに目を転じると,3DシステムズがフランスのPhenix Systemsを買収したことで金属粉末積層造形装置市場に参入,国内では日本法人のスリーディー・システムズ・ジャパンが販売を展開する。

また,EOS製金属粉末積層造形装置をNTTデータエンジニアリングシステムズが,コンセプト・レーザ製金属粉末積層造形装置を工作機械輸入商社のシーケービーが国内販売を手掛けている。いずれも搭載しているレーザはファイバレーザで,EOS社はIPGフォトニクス製を,コンセプト・レーザはロフィンバーゼル製を採用している。

このうち,コンセプト・レーザは造形範囲が630×400×500mmで,1kWファイバレーザを搭載した大型3Dプリンタを製品化しており,海外自動車メーカに納入実績を持つ。高出力レーザを採用することで造形時間の短縮化を図ることができるとされているが,生産性を高めるにはガルバノミラーの高速化も重要なファクタとなっている。


※本レポートではハイエンドクラスの積層造形装置について,一部「3Dプリンタ」との用語を使用していることをお断わりします。