3Dプリンタの実力は如何に?

日本のAM技術開発の取り組み

日本では経済産業省が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として,2012年度から「次世代素材等レーザー加工技術開発プロジェクト」を開始しているが,この中で金属粉末レーザ積層造形装置とその光源の開発が行なわれている。

また,高速3D積層造形システムと革新的鋳造生産プロセス技術の開発に取り組む「超精密三次元造形システム技術開発プロジェクト」もスタート。2017年度までに軽量・高剛性の超複雑形状鋳造製品を一体成型で製造するための技術開発に取り組む。

このプロジェクトでは①2015年度末までに積層造形速度が5万cc/hの鋳鉄・軽合金用3Dプリンタの開発,②2017年度までに積層造形速度が10万cc/hの販売価格2,000万円以下の3Dプリンタを開発,③2017年度までに鋳造コストを1,000円/kgにする—を目標としており,これらを達成するための個別開発テーマを設定している。

さらに,「三次元積層造形システムを核としたものづくり分野における戦略策定調査」に係る公募も開始しており,これに関する海外の動向に加え,技術動向の調査を開始する計画だ。日本はAM技術の開発において,先行する米欧を追撃すべく国プロを立ち上げ,予算確保にも動き出している。

3Dプリンタ市場と参入メーカ

3Dプリンタが注目されている中にあって,その市場拡大を期待する声は高い。米国調査会社Wohlers Associatesは世界における3Dプリンタ市場をまとめた報告書「Wohlers Report2013」を発表しているが,それによると,2012年市場は約22億ドル,2015年は対前年比2倍の40億ドルになると予測し,2021年には108億ドルに達すると見ている。

図1 3Dプリンタ市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所)
図1 3Dプリンタ市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所)

国内市場に関しては,この1月に発表された矢野経済研究所のリリースによると,2011年度市場は台数ベースで638台,金額ベースで41億2,500万円だったが,2012年度見込みで1,010台,56億5,500万円,2013年度予測が1,200台,62億円となり,2015年度には1,800台,77億円に成長するとしている(図1)。

3Dプリンタ市場は成長への期待値が高いものの,果たして今後本格的な普及へとコマを進めることができるのかが注目されている。

現在,世界市場では樹脂系3Dプリンタにおいて圧倒的なシェアを持っているのが,米国3Dシステムズとストラタシス。一方,ハイエンドクラスの金属粉末3Dプリンタ市場ではドイツ・EOSを筆頭に,同じくドイツのコンセプト・レーザ,スウェーデンのArcamのシェアが高い。

こうした海外メーカは日本市場にも進出しているが,国内のハイエンドクラス3DプリンタメーカではCMET やアスペクト,松浦機械製作所などが参入している。

日本における3Dプリンタ市場は2000〜2001年頃に自治体の補助制度の後押しもあって導入が進んだものの,当時は3Dプリンタに対する過渡の期待と性能面のギャップがあったために普及に至らなかった経緯がある。その後,国内メーカは統廃合を繰り返し,現在に至っている。

しかしながら,その間にもAM技術の進展に伴う装置の改良は着実に進められてきた。ただこれについて識者によると,「日本が先行していた3Dプリンタが米欧に引き離されることになった要因は,そこに気づかなかったため」という見方もある。

それでも普及に向けては解決すべき課題が多いのも事実。装置はもとより,材料の開発にはかかるコストが問題とあって,応用を含めて多角的な開発支援体制を構築することが求められている。