3Dプリンタの実力は如何に?

米欧におけるAM技術開発の動向

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AM技術の研究・開発は米欧が先行しているのが現状だ。米国ではこのAM技術の研究・開発に対し,約1,000億円を投じ,15ヶ所の研究所で構成するNAMII(National Additive Manufacturing Innovation Institution)を設立し,樹脂系や金属系材料を用いたAM技術の実用化開発を強力に推し進めている。

既にいくつかの開発プロジェクトが走り出しており,大学における基礎研究と実用化のギャップを埋めるための開発に取り組んでいる。一方で,人材育成にも着手しており,教育現場の改革にも力を入れているという。

米国におけるこうした動きは「ものづくり(製造業)を自国に回帰させる」という狙いがあるようだ。また,これによって雇用創出の機会を得ようとする目的があると言われている。

AM技術における3Dプリンタの利用は,特に航空・宇宙産業分野で進んでおり,例えば,ロケットエンジンや戦闘機の部品などが製造されている。ボーイング社では787型機でも一部の部品でAM技術を用いているようだ。また,GE社(General Electric)ではエンジン部品を,AM技術を活用して製造することをアナウンスしているのは知られているところで,今後の動向が注目されている。

一方,欧州は金属系材料によるAM技術の開発で強みを発揮している。レーザ開発でも政府主導で大型プロジェクトが組まれており,産業応用へのアプローチが進んでいる。

AM技術の研究・開発では,ドイツFraunfofer-Instituteを中心として取り組んでいるほか,イギリスでは産学官連携による高付加価値技術の研究・開発を支援する団体「High Value Manufacturing Catapult」が発足しており,ここに参画するMTC(Manufacturing Technology Centre)の中で進められているという。

欧州では産業分野への適用に加えて,3Dプリンタを芸術分野に利用するといったアプローチもあり,個性豊かな作品が生み出されている。また,欧米ともに3Dプリンタを活用した造形サービスによるビジネス展開も進んでいる。

こうした米国や欧州におけるAM技術開発に共通するのは,用途(アプリケーション)の開発を主体にしていることだ。それに応じた最適な製造プロセスを開発するうえで装置開発を進めているように思われる。まだまだ発展途上のAM技術とあって,どのような技術が創出されるのかが注目されている。