レーザが支えるトンネル壁面形状計測

トノックスの走行型レーザ計測システムの原理(カタログ提供:トノックス)
トノックスの走行型レーザ計測システムの原理(カタログ提供:トノックス)

日本では高度成長期以降に整備された高速道路や道路橋,トンネルなどの社会インフラの老朽化が問題視されている。国土交通省によれば,今後20年で建設後50年以上経過する施設の割合は加速度的に高くなるとし,例えば,トンネルでは2012年3月の約18%から10年後には約30%,20年後には約45%になるという。従来,トンネル表面の損傷を調べるには近接目視や打音検査によって行なわれてきたが,検査の際,交通規制を行なっての作業となるほか,長距離であるほど時間を要する。こうした課題を解消し,高精度にトンネルの形状計測を行なうことができる車両走行型トンネル覆工表面レーザ計測システムが開発されている。

トノックスは独自のフライングスポット法による車両走行型のレーザ計測システムを開発している。システムはレーザ光をトンネル壁面に走査し,反射光を受光素子により検出する仕組みで,計測は60km/hの速度で連続画像を取得できるとしている。採用しているレーザは532nmのYAGレーザで,6面ミラーによるスキャン速度は3万5,000rpsとしている。

トンネル壁面の形状計測では競合する技術にカメラを用いた計測システムがある。しかし,カメラによる計測では焦点を合わせる必要があること,さらにトンネル内に設置している照明の影響を受けやすいため,計測精度が低下するといった課題がある。レーザによる計測ではこうした問題がないのがメリットとして挙げられる。

一方で,カメラとレーザを併用した走行型計測システムも開発されている。計測検査が三菱電機と共同で開発したもので,走行しながらカメラによるトンネルの覆工面のカラー画像の撮影と,レーザによる3次元空間位置データを取得できるシステムだ。

開発は,近畿地方整備局が運営する「新都市社会技術融合創造研究会」のもと,京都大学名誉教授の大西有三氏をリーダとする「走行型計測技術による道路トンネル健全性評価の実用化研究プロジェクト」で産学官連携によって取り組まれた成果を活用した。

計測は50km/h程度の速度で可能とし,カメラによる撮影では漏水個所や変色,0.2mm幅以上のクラックを認識できるという。レーザによる形状計測は分解能が0.1mmで,トンネル覆工面の微小な段差も検出できるという。