垂直共振器面発光型レーザーの
世界市場規模2020年に21億米ドルへ

1. はじめに

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米国調査会社BCC Researchによると,垂直共振器面発光型レーザー(VCSEL)の世界市場規模は,2015年から2020年にかけて21.9%のCAGR(年間複合成長率)で推移し,2015年の7億8,160万米ドルから,2020年に21億米ドルへ拡大すると予測されている。

同社の調査結果をまとめた調査レポート「垂直共振器面発光型レーザー(VCSEL):技術および世界市場」の中から一部を紹介したい。

2. 概要

2.1 ロードマップ

VCSELのコンセプトは30年以上前から存在していたが,当時はその実現に否定的な意見が大勢を占めており,研究開発もそれほど盛んではなかった。

1993年にHoneywell Technology Centerで研究が始まると,1996年には世界初のVCSELダイオードの商用化に成功した。しかし,VCSELに対する世間の見方は大きくは変わらなかった。

VCSELが注目を集め出したのは2000年になってからである。大規模な光通信ネットワークに組み込まれたVCSELダイオードが1 Gb/sの伝送レートを実現させたのである。

2004年には4 Gb/s対応のVCSELが光学マウスに組み込まれ,ダイオード市場全体のダイナミクスに変革をもたらした。その後,こうしたデバイスは,ヘルスケア業界,産業用機器,コンピュータハードウェアなどに続々と導入されていった。

2006年には反射式センサーが発売され,レーザーとの組み合わせで,プリンター,織物工場,自動販売機などに採用された。

2010年には14 Gb/s,16 Gb/s対応のVCSELが発売され,光通信,医療向け市場における需要がさらに拡大した。

近年,半導体向けに500 nmから1,200 nmの波長を持つVCSELが発売されている。チップオンボード,チップオンリードフレームなど,パッケージングの構造によって異なる波長帯のVCSELが使い分けられている。

さらに最近では,スーパーコンピュータやデータセンタ間の相互接続への利用が増加している。そうした用途では,高速かつ電力消費の小さい光源として,VCSELが最もメジャーな選択肢となりつつある。

2.2 期待される役割と将来の動向

SANやLANなどの短距離通信ネットワークでは,VSCELは将来的に主要な光源となると期待されている。長波長,高帯域のVCSELの開発が進めば,低コスト,波長可変性,低駆動電流といった特性を活かし,オンサイト,オンプレミスにおけるPONでの採用が広がると思われる。

また,VCSELは進化したジェスチャー認識においても重要な役割を果たすだろう。

3Dセンシングを利用したタッチレス操作をタッチセンサーに組み込む研究が進んでいる。ユーザーは手や足の動作によって全てのオブジェクトを操作することができる。これを実現させるためには,検知システムが強力で正確であることが条件となる。

6フィート離れたところから微妙な手の動作で対象を操作することは,タッチスクリーンとは全く違うコンセプトであるといえよう。ToF(Time of flight),位相差の二つが3D計測に使われる最も一般的なテクニックである。

ジェスチャー認識には,波長の安定性と可変性,高出力,低コストといった特性が不可欠である。分布帰還型レーザーは出力が固定されており,LEDの場合,波長の調整には時間がかかる。また,この二つの技術で得られる解像度は低く,高輝度を得るための電力消費も大きい。VCSELはそうした問題の解決策として注目を集めている。

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