眼鏡レンズコーティングの最新動向—眼の健康を考慮した眼鏡レンズコーティング—

1. はじめに

現在,眼鏡レンズの95%以上はプラスチック素材となっている。プラスチック素材は軽い,割れにくい,加工し易いなど,メリットは豊富にあるが,キズや熱に対する耐性はガラス素材よりも劣る。よって,それらのデメリットを補うため,種々のコーティングが施されている。一般的にはハードコート,反射防止コート,撥水コートの3種のコーティングがレンズの両面に成膜されている。今回は反射防止コートに焦点を当て,最近の眼鏡レンズコーティングの動向について説明する。

反射防止コートは反射による光の損失を抑え,透過率を上げることを目的としたコーティングである。眼鏡レンズの分野では,真空蒸着法による成膜が主流であり,5~7層程度の誘電体多層膜から形成される。

10年程前までは誘電体多層膜の層数や各層の膜厚を調整し,耐熱性能や耐傷性能,耐クラック性能など,レンズの性能を向上させることに重点が置かれていた。

勿論,昨今でも各社,レンズの性能を上げることは行われているが,紫外線や青色光線,近赤外線のような有害光線から眼を守る『眼の健康を考慮した機能レンズ』の開発が盛んに行われており,中でもブルーライトカットコートや近赤外線カットコートは市場に多く出回っている。紫外線も有害光線であることは周知の事実であるが,眼鏡レンズにおいては,プラスチック素材の中に紫外線吸収剤が添加されているため,眼鏡レンズではコーティングで特別にカットする必要はない。

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