非冷却遠赤外線カメラ市場の現状と今後のシナリオ

5. 新規市場創出で日本から世界へ

図2 非冷却遠赤外線カメラ市場の現状と今後
図2 非冷却遠赤外線カメラ市場の現状と今後

車載向けが起爆剤となった場合,量産効果により2018年以降は非冷却遠赤外線カメラ価格は普及価格帯となる。そうなれば,民間向けの新規市場が創出され,軍需向けから民間向けへ市場は一気に広がりを見せてくる(図2)。

たとえば,高齢化社会到来に伴う新規需要として,病院や介護施設における高齢者の徘徊監視,独居老人の見守り・孤独死監視(体温が下がる様子を検知)などが有望視されている。プライバシーを侵害しない映像である点も逆に利点となる。また,センサーのピッチサイズが回折限界を超え6μmまでシュリンクしてくればスマートフォンなどモバイル端末への搭載も可能となる。そうなれば日常の健康状態検知から夜道での不審者検知などありとあらゆる新規用途が創出されるであろう。

その他,ピープルカウンター(レジ等に並ぶ人数を把握しシステムの効率化を測るもの),ビルや住居等の空調管理(室内の人の居場所を検知し,効率的に空調等をコントロール),またはこれらの機能を複数搭載するなど,新規市場創出の可能性は無限大に広がってくる。日本は先進国の中でも高齢化社会に早期に突入する可能性が高く,技術力も高い。日本から新規市場を創出し,日本から世界へマーケットを拡大するようなマーケティング戦略にも期待がかかる。

6. おわりに

非冷却遠赤外線カメラ市場は今,車載向けを契機として,民間向けへ大きく変貌を遂げようとする,まさに夜明け前のタイミングと言えよう。これまでは軍需向けに強い各国の主力プレーヤーが市場を形成してきたが,民間向けに市場を拡大していくためには,民間向けでのマーケティング拡大戦略にノウハウを持った主力プレーヤーの参入も重要なファクターとなる。韓国などアジア勢も追い上げを見せる中,日本も各社一丸となって商機到来シナリオを実現へ導き,世界に挑戦し続けていきたい。

参考文献

2012年版 非冷却遠赤外線カメラ市場のマーケティング分析,㈱テクノ・システム・リサーチ

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