虚像で遊ぶ

月谷昌之介

通勤電車は僕の住んでいる盆地からちょっとした渓谷を抜けて,職場がある平野へと走っていく。列車の窓からは渓谷の四季の移り変わりが眺められ,毎日がプチ観光気分だ。

ひかりがたり1309_p1

或る朝,僕はそんな通勤電車の車両連結部付近の席に座っていた。その日は,たまたま眼の前に立派な体格の紳士が立ちはだかっていたため,向かいの窓を左から右に流れているはずの景色を見ることはできなかった。しかし,左横を見てみると,向かいの窓とは垂直な配置になっている連結部の窓に,僕が本来見ようとしていた景色が反射して映っている。

この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。

ログインフォーム
 ログイン状態を保持する  

    新規読者登録フォーム

    同じカテゴリの連載記事

    • 油の虹は雨上がりに現れる 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2024年03月12日
    • 光に関する忘れ物 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2024年02月12日
    • 金魚に騙される─立体という幻─ 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2024年01月10日
    • アトを超えるもの 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年12月12日
    • 白い虹 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年11月10日
    • 放射冷却─宇宙に熱を逃がせるか─ 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年10月10日
    • 陶器肌になりたいか? 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年09月11日
    • 湖は本当に鏡になったのか 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年08月10日