
1. 構造色
我々の身の回りには人工物・自然物質を問わず,様々な色彩が存在する。これらの色彩は主に染料や顔料に含まれる色素が光を吸収することによって,生み出されるものである。広帯域なスペクトルを持つ太陽光や蛍光灯・LEDが照射されると,色素が特定の波長の光を吸収し,その他の波長の光が反射されて(補色)視覚的に認識している。このような従来の発色方法では,有機系色素の電子遷移を伴うため,光励起状態の有機分子はいずれ分解し,退色する。
一方,光の波長程度の微細構造による光の散乱・干渉・回折を用いた“構造色”は,原理的には半永久的に発色が可能である。構造色では,本来無色である物質が微細構造と秩序配列によって,発色する。構造色の例は自然界でも多く,モルフォ蝶やタマムシの羽は特定の波長の光が干渉により反射され発色している。このような自然界の構造発色に倣った技術の研究開発および製品化が進展しており,近年では自動車塗装用の構造発色性顔料が開発されている。構造色のコンセプトそのものは黎明期を過ぎて,実用段階へ移行している。
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