光を使ったナノ炭素材料の分散制御技術

1. はじめに

炭素(カーボン)材料は,古くは木炭や鉛筆の芯などの形で我々の生活に密着してきた素材である。近年では,炭素繊維を複合した樹脂である炭素繊維強化樹脂(CFRP)がテニスラケットや釣り竿,更には飛行機の機体として,アモルファス炭素であるカーボンブラックとゴムの複合体がタイヤ等で実用化されている。次世代の炭素材料として期待されているのは,ナノメートルサイズの微小なカーボン材料(ナノ炭素材料)である。

これらには,筒状のカーボンナノチューブ(CNT)や,シート状のグラフェン,球状のフラーレンがある。これらの材料が期待される応用先は光学デバイスや電子デバイスから構造材料,化粧品,医薬品など多岐にわたり,国内外,産学問わず多くの研究開発が進められている。しかし,未だ実用化に至っていない要因の一つとして,加工成形が困難であるという事が挙げられる。

私が所属するグループでは,光に応答して形や機能を変化させる光応答性分子(例:アゾベンゼン,スチルベン,アントラセン)を使った,機能性有機材料の開発をおこなっている。これらの材料では,光による分子構造の変化を巧みに利用することで,固―液相転移や高分子のガラス―ゴム相転移を,光で引き起こすことが可能である。その中で私は,光に応答して材料の分散と凝集状態をスイッチングすることが可能な,光応答性分散剤の研究開発をおこなっている。

本稿では,現在我々が取り組んでいる,CNTをはじめとするナノ炭素材料の実用化を目指した,光を用いる新しい加工技術について紹介する。

この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。

ログインフォーム
 ログイン状態を保持する  
新規読者登録フォーム

同じカテゴリの連載記事

  • Mie共鳴により発色するナノ粒子カラーインクの創製 神戸大学 杉本 泰 2021年02月03日
  • テラヘルツドップラ測定に基づく非接触心拍計測の試み 慶應義塾大学 門内 靖明 2021年01月01日
  • 自然な光を用いる瞬間カラー多重ホログラフィーと蛍光顕微鏡応用 (国研)情報通信研究機構 田原 樹 2020年12月01日
  • 高解像蓄光イメージングを可能にする高輝度長寿命室温りん光分子 電気通信大学 平田 修造 2020年11月09日
  • ガラス構造設計に基づく光機能ガラスの開発 (国研)産業技術総合研究所 篠崎 健二 2020年10月02日
  • 印刷技術を用いたナノフォトニクスデバイス作製と高感度バイオセンサ開発 大阪府立大学 遠藤達郎 2020年09月01日
  • 電子状態計測で挑むEUV露光光源用プラズマの最適設計 北海道大学 富田健太郎 2020年08月07日
  • 高色純度・高輝度・高耐久性の分子性赤色発光体 北海道大学 北川裕一 2020年07月17日