東工大ら,切って貼れるTHz非破壊検査シート開発

東京工業大学と理化学研究所は,カーボンナノチューブ膜を材料としたテラヘルツカメラパッチシートを開発し,測定環境に制限されずに様々なモノに適用でき,あらゆる場所で品質情報を取得できる自由度の高いフレキシブル非破壊検査を実現した(ニュースリリース)。

テラヘルツ帯を活用した検査技術は,測定対象内部の形状・材質の情報を非破壊で計測できることから実用化が期待されている。しかし,従来のテラヘルツ検査技術は大掛かりな測定系が必要で,ロボットやインフラ設備を稼働現場に持ち込む実地検査には不向きだった。

そこで研究では,様々なモノに適用可能なテラヘルツカメラパッチシートを開発した。カメラの作製に向けては,単一の検出器を小型化する技術と検出器を2次元に精度良く配列する技術が求められる。そこでまず,フレキシブルテラヘルツ検出器の小型化・高感度化に着手した。

テラヘルツ光の検出原理には,カーボンナノチューブ膜で発生する光熱起電力効果を利用しており,先行研究では材料の熱電特性を高めるために化学ドーピング法によるフェルミ準位の制御を施してきた。しかしながら,この手法は液体を用いるため,小型化及び均一性の観点から複数素子により構成されるカメラのようなデバイスには不向きで,性能のばらつきを抑えた作製プロセスを新規に構築する必要があった。

そこで熱デバイス設計の観点からデバイス構造を最適化し,電極のアシンメトリー構造化とカーボンナノチューブ膜の発熱部の架橋構造化を行なうことで,高い検出感度を保持したままテラヘルツ光の波長サイズまで素子サイズを小型化した。

次にカメラの作製に向けたデバイス作製プロセスの抜本的改善に取り組んだ。まず支持基板となるポリイミドフィルムにナノ秒パルスレーザーを使用してマーキングを行ない,その後レーザー加工済みのポリイミドフィルム越しにカーボンナノチューブの分散液を滴下することで,マーキング箇所のみ濾過が行なわれ,自己整合的にカーボンナノチューブ自立膜の2次元アレイを成膜することができる。

この技術を用いて成膜したカーボンナノチューブ自立膜2次元アレイを元に,テラヘルツカメラパッチシートを作製した。このカメラパッチは対象の形状に合わせて自由に切り貼りすることができる。実際に,樹脂製品の品質検査やインフラ設備のリアルタイムモニタリングに成功したという。

研究では今後,このフレキシブル非破壊検査シートならではの非破壊検査応用の実証に取り組むことで,安心・安全で快適な超スマート社会を支える基盤的検査技術としての実用化を目指すとしている。

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