阪大,新生児黄疸診断を発光指示薬で簡便計測

大阪大学は,黄疸の原因分子である「ビリルビン」に対して,わずかな血液から血中ビリルビン量を計測できる世界初の生物発光指示薬「BABI」を開発した。スマートフォンなどの汎用カメラによる画像撮影を通して簡便に計測を実施できる(ニュースリリース)。

ビリルビンは血液の主要成分であるヘモグロビンの代謝物であり,そのうち非抱合型ビリルビン(UCBR)は人体に害を及ぼすため,通常は胆汁として体外へ排出される。肝臓などの機能異常によりUCBRの血中濃度は変化することから,健康状態を測る指標の1つとして一般的な健康診断にて測定が行なわれる。

新生児は肝臓の機能が未発達なことから,血中UCBR濃度が増加しやすい傾向にある。そのため黄疸になることが多く,さらに核黄疸,難聴,脳性麻痺などの重篤な症状を引き起こす恐れもあることから,その迅速な治療は不可欠となっている。

したがって,新生児では定期的な血中UCBR濃度の測定が求められるが,従来の測定法では,血液を遠心分離したのち吸光度を計測するといった手順を踏むことから結果を得るまでに一定の時間を要し,また吸光度計など専用の計測機器を必要としていた。

今回,研究グループは,ホタルの光などで知られる生物発光を用いて,UCBRを特異的に検出できる新規な生物発光指示薬BABIを開発した。BABIはUCBRが結合すると発光色が青から緑へと変化するため,その色変化を定量することでUCBR濃度を計測することができる。またこの発光は目視で確認できるほど明るいため,スマートフォンカメラのような汎用カメラを用いて撮影することが可能だという。

成分を調整したマウス血液を用いて,BABIによる血中UCBRの検出を試み,その発光をスマートフォンカメラで撮影した。結果,UCBR濃度の増加に応じた青から橙への発光色変化が検出されたことから,BABIとスマートフォンカメラを組み合わせることで,血液におけるUCBR濃度の計測が可能であることが示された。BABIは非常に高い検出感度を有するため,黄疸の症状である皮膚や眼の色が変化する前に,その予兆を早期検出することができる。

BABIを利用したビリルビンの計測法は,少量のサンプルから迅速に計測結果を得ることができる。またスマートフォンカメラだけで計測できるため,導入コストが最低限に抑えられる。また,ビリルビンに限らず様々な検査対象への展開が期待されるとしている。

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