阪大,レーザーを世界記録の10倍に高出力化

大阪大学は,超高強度レーザーを発生させる新しい技術,WNOPCPAを提案した(ニュースリリース)。

CPA(Chirped Pulse Amplification)技術(Chirped Pulse Amplification、2018年ノーベル物理学賞)を利用して,最近,10PW(1016W)の超高強度レーザーが実現された。しかしCPA技術だけでは,レーザーのピークパワーをさらに高めることは技術的にも経済的にも難しくなっている。

レーザーパルスの時間幅を10fs以下に極短パルス化することは,ピークパワーを上げるための効率的な方法であり、同じパルスエネルギーであればレーザー装置のコストをほぼ変えることなくピークパワーを上げることができる。しかし,現在のレーザー材料による増幅では,極短パルス化に必要な超広帯域のエネルギー増幅ができないことがボトルネックとなっている。

光パラメトリック増幅の特性を活かした発明として,研究グループは,広角非同軸光パラメトリックチャープパルス増幅法WNOPCPAの技術(OSA Continuum)を提案した。レーザー材料よりも広帯域増幅が可能な光パラメトリック増幅(OPA)では,増幅部となる非線形結晶への励起光の入射角度によって利得帯域の中心波長がシフトする。

このため,レンズを用いて励起光に角度傾斜をつけ非線形材料に入射させるだけで,帯域幅を広げることができる。さらに,同様の角度傾斜を持つ励起光を複数用意して各々の励起光の入射角を変えることにより,単一の場合に比べてはるかに広い帯域でレーザー増幅が可能となる。通常のCPAと比較すると,圧縮後のレーザーパルスは,パルス時間幅が1/2〜1/10に短くなるという(最良の理論計算値:3fs)。

WNOPCPAからのレーザー出力を,非線形圧縮技術によって再び圧縮することができる。レーザー光を薄膜/薄プレートを通過させると,非線形効果によりスペクトル幅が大幅に広がり,生成された時間チャープ光をチャープミラーによって補正することで,更にパルス幅を短くできる。これにより,理論シミュレーションでは,レーザーのピークパワーを約5倍に増やすことができる。従来の非線形圧縮と比較して,WNOPCPAのスペクトルは,非線形スペクトル拡大効果をさらに強化できるとする。

研究グループは,WNOPCPA技術を非線形圧縮技術と組み合わせることで,レーザー装置に新たな大規模投資をせずに,現在の超高強度レーザーの世界記録(10ペタワット)を10倍以上超える超高出力レーザー光の生成が可能になるとしている。

その他関連ニュース

  • 阪大,レーザーで冷中性子の発生に成功 2020年12月02日
  • 阪大ら,レーザーで多結晶ナノダイヤの強度を決定 2020年10月29日
  • アストロン,ビームダンプを発売 2020年10月12日
  • アストロン,ハイパワーカロリメーターを発売 2020年10月05日
  • 筑波大ら,レーザーで隕石衝突の瞬間を再現 2020年09月07日
  • 阪大ら,前人未踏のプラズマ現象をレーザーで再現 2020年09月01日
  • 東大,時間結晶の生成メカニズムを発見 2020年07月28日
  • 量研ら,高強度レーザーで世界最大の電場を発生 2020年07月16日