信州大ら,高効率可視光光触媒の電子構造を解明

信州大学,英インペリアルカレッジロンドン,東京大学,英レディング大学,英ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン,加ブリティッシュコロンビア大学らは,可視光照射下で高効率に水から水素を発生する光触媒の電子構造を明らかにした(ニュースリリース)。

LaとRhを共ドープしたSrTiO3は可視光を吸収して水から水素を発生する光触媒であり,水から酸素を発生する光触媒と組み合わせば水を水素と酸素に高効率に分解する。そのため,太陽エネルギーを水素エネルギーに変換する光触媒材料として注目を集めている。

LaとRh共ドープSrTiO3の母体となるSrTiO3は可視光を吸収しない白色の光触媒だが,Rhがドープされると可視光を吸収する。ただし,Rhは価数が変化しやすく,可視光活性の発現に有効なRh3+と活性を低下させるRh4+の両方が存在するために光触媒活性を引き出すことは難しい。

しかし,価数の大きなLa3+がSr2+サイトにドープされるとRhはRh3+の状態が安定となる。ここで,Rh4+がRh3+に変化することで生じるSrTiO3の電子構造の変化や,共ドープされたLaが電荷分離過程に与える影響を理解することができれば,より高効率な光触媒の開発に役立つ知見が得られると期待されるという。

研究では,RhドープSrTiO3とLa,Rh共ドープSrTiO3の電子構造を分光電気化学,過渡吸収分光,計算化学,光電子分光などの手法を駆使して詳細に解析した。RhドープSrTiO3の場合には,Rh4+が電荷をトラップするエネルギー準位をバンドギャップ内に形成する様子が確認された。そのようなトラップ準位は光触媒の反応効率を低下させる。

しかし,十分な負電圧が印加された状態では,Rh4+がRh3+に還元されるとともにトラップ準位が消失し,励起電子を効率よく利用可能な水素発生用の光触媒として機能するようになることがわかった。さらに,La,Rh共ドープSrTiO3の場合には,負電圧を印加しない状態であってもRh4+が存在しないために,様々な反応条件で水素発生用光触媒として効率よく機能できることが明らかになったという。

この研究は,Rhの価数の制御の必要性を再確認するとともに,Laの共ドーピングがRh及びSrTiO3の電子構造の制御において,負電圧印加と同じ効果を有することを示している。このことは,外部から電位を制御することができない粉末光触媒の電子構造を制御する上で重要な知見だとする。今回の研究成果は,電子構造が効果的に制御された粉末光触媒の開発に繋がるとしている。

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