東大ら,原始ブラックホール形成の謎を光学観測

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)と米カリフォルニア大学ロサンゼルス校は,宇宙初期の加速膨張であるインフレーション時に出来た「子」宇宙が,その後にダークマター候補の一つである原始ブラックホールになったとする理論を提唱し,この理論で示されたシナリオが,ハワイのすばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム:HSC)を用いた原始ブラックホール探索の観測で検証できることを示した(ニュースリリース)。

従来の理論研究から,高温・高密度のビックバン火の玉宇宙だった頃の初期宇宙の時代に,平均密度から30%程度大きな空間領域が存在すると,強い重力のためにその空間自身が崩壊し,原始ブラックホールが形成されると考えられている。

一方で,宇宙初期に起きたとされるインフレーションと呼ばれる急激な加速膨張の期間に生じた密度ゆらぎ(密度の非一様性)は非常に小さかったことが分かっており,原始ブラックホールの形成はごく稀にしか起きない。それでも,宇宙空間は広大であるため,宇宙初期の様々な場所で形成された原始ブラックホールがダークマターになり得る。

研究グループは,インフレーションのときに生まれたかもしれない「子」宇宙から原始ブラックホールが形成された可能性に着目。インフレーション時には,宇宙から沢山の「子」宇宙(多元宇宙)が生まれた可能性が従来より唱えられていた。研究グループはこの多元宇宙のうちの小さな「子」宇宙が収縮することで,原始ブラックホールが形成されたとする理論を提唱した。

アインシュタインの重力理論の予言では,「子」宇宙が臨界のサイズよりも大きい場合,「子」宇宙の内側,あるいは外側にいる観測者それぞれに,「子」宇宙は全く別のものとして見える。「子」宇宙の内側の観測者には,その宇宙が膨張し続けているように見え,一方,我々も含む外側の観測者は,その「子」宇宙をブラックホールとして観測する。

なお,2014年のHSCによる観測では,この多元宇宙の予言と矛盾しない,月質量程度の原始ブラックホールの可能性がある重力レンズ候補天体を1例を報告しているという。この観測と今回の理論研究を契機として研究グループは,HSCを用いて多元宇宙を起源とする原始ブラックホール探索の追観測を現在本格的に始めている。今後観測の面から,原始ブラックホール形成の謎を解く手がかりが得られることが期待されるとしている。

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