NECら,金融向け量子暗号通信の検証を開始

日本電気(NEC),東芝,情報通信研究機構(NICT),野村ホールディングス,野村證券は,金融分野におけるデータ通信・保管のセキュリティ強化に向けて,量子暗号技術の有効性と実用性に関する国内初の共同検証を12月より開始する(ニュースリリース)。

今回,5者は共同で,「理論上いかなる計算能力を持つ第三者(盗聴者)でも解読できないことが保証されている唯一の暗号方式」である量子暗号の金融分野への適用可能性について検証する。

なお,金融機関において稼働しているシステム環境の中に,量子暗号に必要となる装置を実際に設置し,検証するという今回の取り組みは,国内で初めてという。

今回5者は,野村證券が保有する顧客情報や株式取引情報等の疑似データ(架空データ)を量子暗号により秘匿伝送する実験や,遠隔地の複数のデータサーバまで秘密分散を用いてバックアップ保管や安全な計算処理を行なう量子セキュアクラウドシステムの動作検証等を実施する。

具体的には,東芝が開発した量子暗号装置を野村證券の拠点に導入し,NICTが2010年から運用を続けている量子暗号ネットワーク 「Tokyo QKD Network」を野村證券の拠点まで伸長する。

量子暗号における暗号化/復号の処理は,伝送情報/暗号文と暗号鍵の単純な論理和であるため,従来の暗号方式よりも低遅延で実行できる。このため,極めて低遅延の通信が求められる取引処理の暗号通信に適しているとする。

こうした低遅延性の検証のために,今回は,ミリ秒未満での取引処理が求められ,大容量・高速通信が必要となる株式トレーディング業務において,量子暗号を用いた場合に処理遅延が発生しないかを検証する。

また,量子セキュアクラウドシステムにおいては,仮に自社システムに外部からの侵入があったとしても,影響を最小限に抑えるための内部対策についても高度化を図る。今回は,安全で利便性の高いアクセス管理技術の高度化,(機密性の高い)顧客データの秘匿性を保ったまま統計情報等を抽出・処理する秘匿計算機能の実装法の検討などに取り組む。

今後,5者はこの検証の成果を踏まえ,金融分野のサイバーセキュリティ強化に向けた量子暗号技術・量子セキュアクラウドシステムの活用策,適切な導入プランの策定などに取り組んでいくとしている。

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