NIMS,GaNで高性能MEMS振動子を開発

物質・材料研究機構(NIMS)は,窒化ガリウム(GaN)の熱によるひずみを制御することで,高温でも安定に動作するMEMS振動子を開発した(ニュースリリース)。

自動運転や先進運転支援システム,鉄道などの通信には高精度な同期が求められ,そのためには一定周期の信号を発生する「タイミングデバイス」として高性能な周波数基準発振器が必要となる。

従来の水晶発振器は大きく集積性が悪いため,半導体電子デバイスへの応用は限定的だった。一方で,MEMS発振器は,熱安定性,位相雑音の低減,周波数の調整,小型化によるCMOSとの集積性に優れ,タイミングデバイスの強力な選択肢となっているが,振動子のQ値が低く,特に高温で悪化するという課題があった。

GaNは,その特性からIoTセンサーや通信におけるMEMS周波数基準発振器の振動子として有望視されている。特に,エピタキシャル膜のGaNと基板Siの結晶構造が似ていないことによるひずみを,エピタキシャル成長方法や構造設計から調整できるという利点がある。

研究では,MOCVDを用いてSi基板上に高品質GaN結晶を成長させることに成功した。界面のひずみを除去するための,大きな内部ひずみを実現するGaNを,Si上に直接成長させた。温度の下げ方の最適化により,ひずみ除去層を用いる従来手法に匹敵する高品質のGaN結晶膜を得た。

このGaN結晶膜で,両持ち梁型の構造をしたMEMS振動子を作製した。この振動子には2つの共振モードがあり,典型的な曲げモードを除くと,引っ張りひずみによって誘発される特別なモードも観測され,これらは,座屈モードに分類される。

両持ち梁型振動子では,曲げモードの共振周波数はヤング率で決まるが,座屈モードの共振周波数は座屈たわみとヤング率の両方で決まる。温度が上がるとヤング率は低下するが,座屈たわみは増加する。GaNとSiの熱膨張係数は温度によって異なるため,熱によって内部に生じる応力が座屈たわみを起こす。

そのため,座屈モードの温度に対する周波数安定性は大幅に改善した。座屈モードの周波数温度係数の温度依存性を調べたところ,Si系MEMS振動子の6分の1の低い値が得られた。最高のQ値はGsN系MEMS振動子としては最高値を達成した。温度上昇に伴う変化が少なく,600Kまで上昇しても悪化しなかった。GaNとSi基板の熱膨張率の差が寄与したと考えられるという。

これにより,CMOS技術との統合による高集積化によって5G通信とIoT向けタイミングデバイス,先進運転支援システムなどへの応用が期待されるとしている。

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