東大ら,宇宙の温度変化の歴史を明らかに

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU),マックス・プランク宇宙物理学研究所らは,スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果の影響を解析することで,宇宙大規模構造中のガスの平均温度は過去80億年の間に3倍程度上昇していることを明らかにした(ニュースリリース)。

誕生直後の宇宙には,量子力学的なゆらぎとインフレーションによって生じた小さな密度のゆらぎが存在していたと考えられている。この密度のゆらぎは,今日私たちが宇宙マイクロ波背景放射(CMB)として観測できる電波となった光の強度にわずかに生じているゆらぎ(温度のゆらぎ)に対応しているとされている。

現在の標準的な理論では,この宇宙初期の小さな密度ゆらぎが種となり,周囲のダークマターやガスを引き寄せて銀河や銀河団が生まれ,網の目状に広がる宇宙大規模構造を形成してきたと考えられている。一方で宇宙大規模構造の形成にはまだ謎も多く残されており,研究者達は様々な手法を用いて過去から現在にわたる構造形成の進化の様子について調べようとしている。

今回研究グループは,宇宙の大規模構造の進化に伴って大規模構造中のガスの温度の平均値がどのように変化してきたかを調べた。欧州宇宙機関(ESA)の衛星の CMBデータと米国のスローン財団望遠鏡の200万もの天体の分光観測データを用いた。そして,これら2つの観測プロジェクトのデータを組み合わせ,スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果を用いた解析を行なった。

スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果とは,CMBの光子が宇宙大規模構造を通過する際,大規模構造内にガス状に存在する高温の電子によってCMBの光子が散乱されることで生じる。この散乱により,CMBの光子は高温の電子からエネルギーを受け取り,その結果として宇宙大規模構造を通過しない他の光子に比べて高いエネルギーを持つようになる。

この光子のエネルギー変化を調べることで,大規模構造中の高温電子ガスを可視化できる。スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果の強さは高温電子ガスの熱的圧力に比例するため,これを調べることで大規模構造中の高温電子ガスの温度を測定することができる。

解析の結果,約80億年前のガス中の電⼦の平均温度は約70万Kだったが,今⽇では3倍程度の約200万Kにまで上昇していることがわかった。さらに,理論的なモデルと比較した結果,このガスの温度の進化は,宇宙大規模構造の形成に伴う衝撃波による加熱でほぼ説明されることが示された。

研究グループは,この手法が今後の宇宙大規模構造形成の理解を深め,精密宇宙論の理論的理解にも貢献するとしている。

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