東工大,強誘電性の窒化物強誘電体を薄膜化

東京工業大学は,強誘電体の中で最も高い強誘電性を持つことが報告されている窒化アルミニウムスカンジウムについて,スカンジウムを低濃度にすることによって,従来よりも高い強誘電性を発現する膜の作製に成功した(ニュースリリース)。

強誘電体は,電圧の印加方向によって,結晶に2通りの安定な状態(分極状態)があり,電源から切り離してもその時点の分極状態を保持できる。分極状態の保持には電力をまったく使わないため,理論的には電源がなくても情報が保持できる不揮発性メモリを作製できる。しかし,強誘電体の膜の作製が難しく,実用では一部の用途に限られてきた。

2019年に,現在スマートフォンの高周波フィルターに使われている窒化アルミニウムスカンジウム[(Al,Sc)N]が高い強誘電性を持つことが報告された。しかし,強誘電体には薄膜化すると強誘電性が失われる「サイズ効果」があり,その際に強誘電性を失う厚さが物質によって大きく異なる。

メモリを低消費電力で動作させるためには,強誘電体を薄くすることが不可欠だが,この研究で報告されたデータは150nmの厚膜に関するものであり,薄膜化しても強誘電性が発現するかは不明だった。

研究では,気相にしたスカンジウム(Sc)とアルミニウム(Al)の金属を窒素ガスと反応させることで、スカンジウムとアルミニウムの比[Sc/(Sc+Al)比]が異なる数種類の窒化アルミニウムスカンジウム[(Al,Sc)N]を作製した。

その結果,これまでの報告と比べて,Sc/(Sc+Al)比が小さく,かつ電源を切り離したときに残る1cm×1cmあたりの静電容量(残留分極値)が大きい,強誘電性を有する膜の作製に成功した。

さらに,Sc/(Sc+Al)比が小さいほど,ある分極状態から別の分極状態に変える(反転させる)のに必要な1cmあたりの電圧(抗電界)と,印加できる1cmあたりの電圧(最大電界)の差が広がることがわかった。このことから,スカンジウムの濃度を低くすることで,分極状態を繰り返し反転させても,2つの状態の間での安定した行き来を実現できることを見出した。

また,膜厚を従来の約3分の1にあたる48nmまで薄くしても,高い強誘電特性が維持できること,さらに薄い9nmでも強誘電性を発現することを確認した。

今回の成果により,低消費電力で動作する強誘電体メモリの実用化の加速,IoTの端末用メモリとしての応用,新規デバイスへの応用が期待できるとしている。

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