筑波大ら,レーザーで隕石衝突の瞬間を再現

高エネルギー加速器研究機構(KEK),筑波大学,熊本大学は,ジルコニア(ZrO2)鉱物であるバッデレイアイトについて衝撃実験を行ない,衝撃を受けている最中に起きる結晶構造の変化をナノ秒の時間スケールで直接観測することに成功した(ニュースリリース)。

過去の隕石衝突の痕跡は惑星表層の岩石に残されており,その情報を正確に読み解くことで,いつどのような規模の衝突が起きたのかを理解することができる。そのためには,岩石を構成する最小単位である鉱物がどのくらいの衝撃でどういう変化を起こし,最終的な状態に至るのかが重要となる。

隕石衝突履歴を知ることができる鉱物の一つにバッデレイアイトがあります。ジルコニアであるバッデレイアイトの化学組成はZrO2で,ウラン–鉛同位体年代測定法を用いることでその鉱物がいつ形成されたのか,いつ変形したのかを知る「時計」としても用いられる。

これまでの研究で,隕石衝突クレーターでバッデレイアイトが隕石衝突の衝撃により微細化を起こしたと考えられるものが報告されているが,クレーターの観察ではもちろん,実験室でのこれまでの衝撃実験でも実際に衝撃を受けている瞬間にどのように結晶構造が変化するのかは直接観察されたことはなかった。

そこで研究グループは,放射光実験施設PF-ARに構築した衝撃下その場X線回折測定システムを用いて,衝撃を受けている瞬間のバッデレイアイトの結晶構造の変化を詳細に観察した。この手法では高強度レーザーを照射することで衝撃波を発生させ,その衝撃波が伝播している瞬間の結晶構造を放射光X線パルスにより撮影することができる。

その結果,衝撃圧縮によりX線写真に変化が見られ,わずかに結晶構造を変える,ことが初めて直接観察された。また,その結晶構造の変化が起きる圧力境界が3.3ギガパスカル(=3.3万気圧)であることも明らかになり,バッデレイアイトから隕石衝突規模を推定するための正確なデータを得ることに成功した。

結晶構造スケールでの変化は,衝撃による鉱物全体の変形に反映されるため,この研究の様に結晶構造の変化過程を理解することは全体の変形・破壊現象を把握するために非常に重要だという。

この研究により,バッデレイアイトがどれくらいの衝撃でどのように変形するのかが解明され,隕石中や天体表層にあるバッデレイアイトから太陽系天体の形成,進化過程を正確に紐解いていく研究に貢献することが期待されるとしている。

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