2030年AR/VR表示機器市場,16兆1,711億円に

富士キメラ総研は,表示機器の性能向上や5G通信の登場などで活気付きつつあるAR/VR市場を調査し,その結果を「AR/VR 関連市場の将来展望 2020」にまとめた(ニュースリリース)。

それによると,ARスマートグラスは物を運ぶなど両手が塞がる作業が多い建設現場や製造現場での作業支援などBtoB向けが中心となっている。各種現場の作業従事者数の多さから潜在需要は大きいとみるほか,2020年から新型コロナウイルス感染症の影響で,遠隔で指示や支援をすることで現場の対応人数や移動人数を減らせる遠隔作業支援を目的とした採用が加速するとみる。

なお,スマートフォンと連携させ画面を表示する接続型の増加による市場拡大が期待されているが,長期的にはMRスマートグラスへの移行を想定する。

性能要求としては,BtoB向けでは,長時間稼働や装着性向上に加え,多様な労働環境下で使用されることから防塵/防滴を含めた耐久性向上,ハンズフリー,ケーブルレス,音声入力認識精度向上などが強いという。一方,BtoCのゲーム用途,BtoBtoCのアミューズメントや観光/旅行用途では高解像度や広視野角に対するニーズも高い。

MRスマートグラス市場はBtoB向けが中心。性能を重視した製品が多く,高価格でサイズが大きいことから,BtoC向けは少ないという。軽量化と低コスト化を重視したスマートフォン接続型が2020年に投入されたが,センシングの精度がBtoB向け製品と比較して低いため,本格的な普及はAppleなどの大手メーカーの参入が進む2022年以降とみる。また,スタンドアロン型はCPU処理とバッテリー性能のバランスが良い製品の登場が予想される2025年以降になるとしている。

性能要求としては,最も強いのが装着性向上や軽量化だという。作業ができる重量として200g以下が求められており,ARスマートグラスと比較して重すぎる点がネックとなっている。そのため,CPUをスマートフォンなどのモバイル端末が担う接続型の普及が先行するとみる。

また,センシング精度の向上は進んでいるものの,LiDARを中心としたセンシングでは晴れた屋外などで精度が落ちることもあり,メーカーの対応も進んでいくとみている。

VRを投影するHMDは,PCやゲーム機,モバイル端末のCPU・GPUで演算処理を行なう接続型と,表示機器にCPUが搭載され単独で機能するスタンドアロン型を対象とした。

接続型は,「PlayStation VR」が販売開始から時間がたち出荷台数が減少していることから,2020年の市場は縮小するとみる。今後は2020年末に発売が予定されている「PlayStation 5」に対応する新型のゲーム機接続型HMDの投入や,2021年以降は複数のメーカーからモバイル端末接続型HMDの投入が期待されることから,2024年頃まで市場は大きく拡大していくとみる。

しかし,拡大をけん引するモバイル端末接続型の低価格化やスタンドアロン型への移行などにより,長期的には市場は縮小していくという。

スタンドアロン型は2016年頃より複数のメーカーが製品を発売し始めた。2019年に発売された「Oculus Quest」の好調や,4K解像度のディスプレーを搭載した機器の発売,在宅時間の増加によるVRチャットやテレワーク時の会議参加のためのコミュニケーションツールとしての採用により,2020年の市場は拡大するとみる。

現状スタンドアロン型はゲーム機/PC接続型に比べると処理能力が低いが,性能向上が進むことで市場は拡大していくとみる。

性能要求として最も強いのが装着性向上や軽量化だという。また,スタンドアロンやケーブルレスへの対応も市場拡大のための課題の一つだとする。なお,BtoBではデータの解像度をHMDの性能に合わせた解像度に落とす手間がかかることから,高解像度ニーズも高い。また,純粋な高解像度表示を目的としたニーズは医療向けで高く,8K超も求められているという。

AR/VR表示機器の世界市場調査は,スマートグラス,HMD,ヘッドアップディスプレー(HUD),空中ディスプレーを対象とした。現状,高級車を中心に搭載されるHUDと,BtoC向けが多いHMDが市場をけん引している。

2020年は,5G通信対応スマートフォンに接続するHMDやスマートグラスの伸びが期待されていたが,新型コロナウイルス感染症の影響で市場の立ち上がりが遅れており,2021年以降に本格化するとみる。なお,5G通信を用いることで高画質のVR動画の視聴が可能になるため,各モバイル通信キャリアによる5G通信対応スマートフォンと表示機器のセット販売や,AR/VRのコンテンツやソリューション展開が進むとみる。

また,2022年頃までにはAppleによるMRスマートグラスの発売が予想され,BtoC向けのスマートグラス市場の本格化が期待されるという。機器の性能向上により,2025年から2030年にかけてポストスマートフォン,あるいはほかのIT機器を代替するモバイル端末として,大きく伸びるとみる。

スマートグラスがけん引することで,AR/VR表示機器の世界市場は2030年に2019年比44.8倍の16兆1,711億円を予測する。また,スマートグラスのほか,HMDやHUDも伸長していき,HUDではリアルタイムのAR表示を可能とする高度なAR-HUDの需要増加が期待されるとしている。

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