東工大ら,世界初のp型透明超伝導体を実現

東京工業大学,東北大学は共同で,低温で超伝導体になる層状ニオブ酸リチウム(LiNbO2)が常温では優れたp型透明導電体になることを発見した(ニュースリリース)。

「透明導電体」は透明性と電気伝導性を併せ持つ物質。ガラスに代表されるように,透明な物質は基本的に電気を流さない。しかし,ある種の材料では電気が流れることが知られており,酸化インジウムスズ(ITO)などが実用化されている。しかしながら,実用水準の材料はすべて電子が流れるn型であり,n型とペアになって多様な電子回路を構成しうるp型透明導電体は,まだ研究開発の段階に留まっている。電気抵抗がゼロになる超伝導体も常温で金属の不透明なため,これまでp型透明超伝導体は見つかっていなかった。

研究グループは,p型透明超伝導体の候補としてニオブ酸リチウム(LiNbO2)に着目。この物質は30年前から超伝導体であることが知られていたが,薄膜合成が困難であることから、透明性の詳し
い性質まではわかっていなかった。

今回研究グループは三段階合成法を開発し,超伝導薄膜の合成に世界で初めて成功した。最終段階でヨウ素溶液に薄膜を浸すだけで電子を引き抜くことができる化学反応を利用し,簡便でかつ精密な合成法の確立に成功した。合成した薄膜はこれまでに知られていた通り4.2ケルビン(マイナス269℃)以下で電気抵抗がゼロになり,超伝導体であることを確認した。一方で,ヨウ素溶液から取り出した薄膜は赤色から黄色へと劇的に変化し,可視光の平均透過率が50%に達する高い透明性を示した。

従来のp型酸化物透明導電体と常温における性能を比較すると,電気伝導性と透明性がともに優れていることが明らかになった。ヨウ素溶液に浸して電気伝導性を上げると透明度も向上するという,従来の物質とは対照的な結果が得られた。

研究グループは,物質内でニオブ原子と酸素原子が作る三角柱型の二次元層が重要な役割を果たしていることを見出した。この特殊な構造により,強相関電子と孤立したバンド構造というユニークな特徴が実現されていた。これらの電子状態が協奏することで,近赤外と紫外領域の両方で高い透明性が実現されていた。さらに,ヨウ素溶液の酸化作用を用いて,それらの特徴をほどよく調整した結果,超伝導を発現しつつ可視光領域の透明性を向上できることを明らかにした。

この発見は新しい電子材料として様々な応用につながるだけでなく,二次元物質の新たな物理現象の開拓にもつながるとしている。

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