東大ら,窒素ドープ型ナノチューブ分子を合成

東京大学,名古屋大学,東北大学の研究グループは,周期的に窒素原子が埋め込まれたナノチューブ分子(窒素ドープ型ナノチューブ分子)の化学合成に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

ナノカーボンに,炭素以外の異種元素をドープ(埋め込み)すると,物性を大きく変えられることから,その開発が注目されている。なかでも,窒素ドープ型ナノカーボンの研究が盛んになっている。

しかし,物理的な製造法を利用していることから,ナノカーボンに窒素原子の位置や数を制御しながら埋め込むことが不可能であったことが,新材料開発を阻むボトルネックとなってきた。

今回,研究グループは,窒素原子を特定の位置に特定の数だけ埋め込んだナノチューブ分子の化学合成に成功した。

2019年に独自に開発したナノチューブ分子化学合成法に,新たに窒素原子を埋め込む工夫を凝らした。これまでベンゼンを用いてきた化学合成法に,新たにピリジンを活用した成果となる。

この方法により,ナノチューブ分子の304個の構成主原子のうち,8個を窒素原子とすることができ,窒素原子の含有率を精確に2.6%とすることができた。これまで材料科学分野で検討されてきた窒素ドープナノカーボンの窒素含有率は2~5%の幅だった。

この方法で合成した窒素ドープナノチューブ分子は,その幅内に収まる窒素含有率を持っていることから,材料検討されてきた窒素ドープナノカーボンの電子的性質・化学的性質を正確に探るのに適した組成を持っていることになる。

今回の研究では,また,最先端X線構造解析法により,窒素上の孤立電子対(ローン・ペア)の存在を明確にし,さらに理論計算によりその電子的寄与を明らかにした。

その結果,窒素にはナノチューブに電子を注入させやすくする効果があることが見つかった。これまで窒素ドープナノチューブは,p型半導体にもn型半導体にもなることが報告されていたが,その由来や制御法は明らかになっていなかった。

今回の研究成果は,窒素が電子を受け取り易くすることで,n型半導体になりやすくさせることを明らかにしたものとなるという。またこれらの新知見は,今後の窒素ドープナノカーボン材料の開発を加速することが期待されるとしている。

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