量研,狭空間向け管内レーザー溶接技術開発

量子科学技術研究開発機構(量研)の研究グループは,核融合炉内機器用の冷却水配管を配管の内側からレーザーを用いて溶接する技術を拡張し,配管を確実に溶接できる技術を開発した(ニュースリリース)。

日欧共同で茨城県那珂市に建設中の超伝導核融合炉トカマク装置「JT-60SA」では,冷却水配管が狭隘な空間に配置され,繋ぎ目の固定や外側からの溶接が困難であることから,繋ぎ目の位置調整が不完全であっても確実に溶接できる技術の開発にこれまで取り組んできた。

研究グループは,配管接続部の外側の状況に左右されない配管の内側から溶接する「管内溶接」技術に着目して溶接ツールの開発を行ない,中でも光ファイバーによって狭隘な空間に伝送可能であるレーザー溶接を採用した。

冷却水配管内へ溶接ツールを挿入し,配管接続部において高出力レーザーによって溶接する。光ファイバーを通じて伝送されたレーザーを,ツール先端部において金メッキされた銅製ミラーに反射させることにより,ツールの外周方向に向かって放出する。

なお,溶接時に発生する霧状のヒュームやスパッタ粒子がミラーに付着するとレーザーの反射率低下により溶接の品質低下に繋がる。これを防止するため,レーザー放出口から窒素ガスを放出することに加えてエアカーテンを生成することにより,溶接回数20回以上のミラーの耐久性を実現した。

配管の突き合わせ部分では軸ずれや傾きが不可避となる。そこで,軸ずれや傾きがある状態で配管を固定し溶接試験を実施した。配管が傾くと配管同士に隙間ができるが,その場合,一般的には溶加材を外部から供給し隙間を埋める。

他方,管内溶接では外部からの溶加材の供給が困難なため,配管接続部の内壁に冷却水の流れに影響のない程度の凸構造のノッチを溶加材として設ける。このノッチをレーザーで照射して溶融させ,配管同士を接続する。

また,上管が傾いている場合,溶接ツールの回転のみで水平に溶接を行なうと円周溶接の途中でレーザーの狙い位置がずれてしまい溶け込み不良の原因となる。

その対策として,溶接前に溶接ツール内のカメラを用いて突き合わせ部を配管内部から撮影することにより,開先の状態を詳細に計測し,その状況に応じて「ツールの回転」と「上下位置」を連動させながら溶接することにより,レーザー照射位置を0.1mm以下という高精度で追従制御する技術を開発した。

これにより,建設中の及び将来の核融合炉で必要となる冷却水配管の設置及び交換に係る技術の高度化に貢献するとともに,配管が密集して修理,交換が難しいプラント機器への適用などの産業利用も期待されるとしている。

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