東工大,スピンホール磁気抵抗効果で1.1%

東京工業大学の研究グループは,トポロジカル絶縁体・強磁性半導体接合を用いて,巨大な一方向性スピンホール磁気抵抗効果を実証した(ニュースリリース)。

MRAMの中でも,スピンホール効果による純スピン流を磁性層に注入し,スピン軌道トルク(SOT)によって磁化反転(データ書き込み)を行なうSOT-MRAMが注目されている。SOT-MRAMでは,スピンホール効果が強い材料を用いれば,書き込みに必要な電流を1桁,エネルギーを2桁以上も下げることができる。

研究グループはSOT-MRAMの読み出しで,一方向性スピンホール磁気抵抗効果(USMR)に着目した。この効果を用いれば,2層だけの極めて簡易な構造の面内型スピン軌道トルク磁気抵抗メモリーの実現が期待できる。

垂直型SOT-MRAM素子(従来のTMR効果を用いる)は(1)約30層と極めて複雑な構造,(2)データ書き込みと読み出しの経路が異なるため3つの端子と2つのトランジスタが必要,(3)微細化すると抵抗が急激に増えて,ノイズが増えるという欠点がある。

それに対して,面内型SOT-MRAM素子(USMR効果を用いる)は(1)2層だけの極めて簡単な構造,(2)データ書き込みと読み出しの経路が同じであるため2つの端子と1つのトランジスタだけが必要,(3)微細化しても素子抵抗が変わらないため,ノイズが増えないという利点がある。

しかし,これまでに研究されてきた重金属・磁性金属の接合では,USMR効果による接合の抵抗変化が0.001%台と極めて微小であり,面内型SOT-MRAMの実現に必要な1%以上の抵抗変化の実現は難しかった。

そこで研究グループはUSMR効果の増大を目指して,トポロジカル絶縁体BiSb(アンチモン化ビスマス)と強磁性半導体GaMnAs(砒化ガリウム・マンガン)の接合を作製した。この接合において,電流と温度が増加すると,抵抗変化が急激に増え,最大で1.1%という巨大なUSMR効果が発現し,応用に必要な1%以上の抵抗変化を初めて達成した。

さらに,この巨大な一方向性磁気抵抗効果の起源は従来に研究されてきた重金属・金属磁性体の接合と異なるメカニズムで生じることも分かった。具体的には,BiSbトポロジカル絶縁体から注入された純スピン流によって,強磁性半導体GaMnAs中のマグノンが励起・吸収が生じて,自由正孔のスピン無秩序散乱によって抵抗変化が生じることを明らかにした。

研究グループは今後,さらなる材料の探査を行なうことによって,室温でより大きな抵抗変化を実現し,面内型SOT-MRAM素子の実用化を目指すとしている。

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