東北大,コンタクトレンズの保湿技術を開発

東北大学の研究グループは,電気浸透流の発生効率が高く成型性にも優れるハイドロゲル素材を開発し,それをコンタクトレンズに用いると,通電によってレンズ内に水流が発生し,乾燥速度が低下することを実証した(ニュースリリース)。

コンタクトレンズは,単なる視力矯正器具にとどまらず,美容・ファッションとしても普及しており,日本人の5人に1人が使用している。そして今後,生体モニタや通信・表示機能を有するスマートレンズが登場すると,コンタクトレンズの役割がさらに拡大していくと予想されている。

一方で,ソフトコンタクトレンズの装用は,涙の蒸発を促進してしまうため,ドライアイの症状を誘発もしくは深刻化する傾向がある。ドライアイは,不快感によるQOL(Quality Of Life)の低下だけでなく,眼球表面の炎症や損傷,視覚障害の原因となることもあるため,コンタクトレンズの保湿技術の開発が強く求められている。

今回研究グループは,コンタクトレンズ内に「電気浸透流」を発生させることで保湿が可能であることを実証した。下瞼裏の涙液メニスカスから涙を汲み上げてレンズの湿潤を維持する新しいスマートレンズの開発につながる成果となる。

電気浸透流は,固定電荷の存在などによってイオンの移動度に大きな差がある場合に,通電に伴って生じる流れであり,キャピラリー電気泳動やマイクロ流路における送液に利用されている。

一方,ハイドロゲルに固定電荷を導入して電気浸透流による送液システムとする検討例は殆どなく,コンタクトレンズ内部に発生する浸透流と保湿性能との関連が指摘されたこともなかった。

今回,世界初の自己保湿コンタクトレンズの機能実証に成功したのは,ハイドロゲルの合成・成型技術,イオン伝導度による含水量モニタリング技術,および生体親和性電池による発電技術の蓄積によるという。

眼孔内の水分の流れ制御は,ドライアイの緩和だけでなく,目薬の徐放制御や,房水排出の誘起による眼圧制御においても重要であり,電気浸透流を利用する新技術が,点眼器や注射器に並ぶ眼孔への注出入法として発展すると期待できるとしている。