名大,「磁気渦粒子」の液晶状態を実現

名古屋大学の研究グループは,磁気スキルミオンと呼ばれる“磁気渦粒子”の,新しい構造(液晶状態)の実現に成功した(ニュースリリース)。

磁気スキルミオン(スキルミオン)は,渦巻状に並んだ電子スピン構造(磁気構造)が持つトポロジーに由来して,全体として粒子のような性質を持つ,トポロジカル磁気構造体と呼ばれるものの一種。

スキルミオンの配列としては,これまで,三角格子や四角格子,アモルファスといった,固体中の原子配列と同様の状態が観測されていたが,液晶に類似した状態の実現はこれまで報告されていなかった。

研究グループは,スキルミオン物質のナノ構造効果と磁気異方性に着目し,厚さ100nmまで薄くしたCo8.5Zn7.5Mn4ナノ構造試料(薄膜試料)を作製した。スキルミオン物質は試料表面効果により,表面からある程度の深さまで磁気構造が変化していることが知られている。厚さが100nmの薄膜試料では,この効果が薄膜全体に及んでいる。

また,このスキルミオン物質は等価な三つの磁気異方性の方向を持っており,それらは互いに直交している。この三つの磁気異方性の方向を一つは薄膜面に平行に,残りの二つを薄膜面垂直から45度傾いた方向に設定することで,薄膜面に対して磁気構造が異方的になるような試料を作製した。

次に,研究グループは,磁気構造を直接観察できるローレンツ電子顕微鏡法を用いて,この薄膜試料の観察を行なった。その結果,既存のスキルミオンが円盤状であるのに対して,この薄膜試料で実現したスキルミオンは特定の方向に伸びた形状を持っていた。

さらに,伸びたスキルミオンの配置を高速フーリエ変換とドロネー三角形分割法という方法を用いて解析した結果,スメクティック液晶と呼ばれる種類の液晶に類似した状態であることが明らかとなった。この“スキルミオン液晶”の発現は,磁気異方性とナノ構造効果が薄膜内部で協奏的に働いた結果だとする。

省エネルギーの次世代スピンデバイスを実現するためには,スキルミオンの動きや配置を制御することが不可欠。今回の“スキルミオン液晶”のような新しい構造が実現されれば,さらに新しい動作原理を持つ省エネルギーの次世代スピンデバイスの実現が期待できるという。

また,この“スキルミオン液晶”では,薄膜試料の方向に応じて異なるスキルミオン間の相互作用(引力・斥力)が働いていることも明らかになった。今回の成果は,スキルミオン間の相互作用の研究にも新たな展開をもたらす可能性を持っているとしている。

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