京大,光超音波イメージングを高精細化

京都大学は,光超音波イメージング技術について,より解像度が高く,動脈と静脈が精度良く分離される画像を得ることに成功した(ニュースリリース)。

光超音波イメージングは,血中のヘモグロビンが光を吸収した後に発する超音波を画像化することで血管を可視化できる非侵襲の生体イメージング技術。酸化・還元ヘモグロビン各々に対応する異なる波長の光を用いることで,酸素飽和度に対応する指標も算出できる。つまり,構造および機能の両方の観点から,血管を解析できる。

研究グループでは光超音波装置に改良を重ね,今回で第4世代の装置を開発し,正常乳腺組織,腫瘤のある乳腺組織,手掌や大腿部などの血管像を取得した。これまでの装置でも精細な血管画像は得られていたが,光超音波技術のもう一つの特長である酸素飽和度指標が位置ずれによって正確に算出できないという問題があった。

今回,2波長の光の照射方法を工夫(逐次照射から交互照射に変更)することで,異なる波長間での位置ずれが解消され,より解像度が高く,動脈と静脈が精度良く分離される画像が得られるようになった。乳房では,従来の超音波画像を同じ座標軸で同時取得し,その2次元画像を積分することで3次元の超音波画像を生成,光超音波による次元血管像と重ね合わせることができる。

研究グループは今後,腫瘍血管の形状や酸素飽和度について詳細な解析を行なう予定。乳房以外では,四肢の細い穿通枝血管が精細に可視化できることがわかり,形成外科において再建手術の術前マッピングへの
活用が期待されるという。また,血管の構造と機能の両面から血管が関与する様々な疾患の病態解明や薬物による治療効果の判定などにも応用が期待されるとしている。

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