東北大ら,ブラックホールの量子もつれが既知より強い可能性を発見

東北大学と名古屋大学は共同で,ブラックホールから輻射が出る過程を模倣した量子ビット模型を提案し,その性質の理論的研究を通して,ブラックホールがこれまで考えられていた”限界”よりも強い量子的なもつれを共有できる可能性を見出した(ニュースリリース)。

ブラックホールは現代物理学の課題のひとつである量子重力理論の完成に向けて重要となることが強く期待される研究対象のひとつ。ホーキング博士によって導入されたベッケンシュタイン・ホーキングエントロピーはブラックホールの熱的なエントロピーであるとこれまで考えられており,それが量子もつれの強さの上限を与えると信じられてきた。

研究グループは,量子ビット模型を用いてこの議論の不十分な点を見出し,これまでの理論的予想が,ある種のブラックホールに対しては成り立たない可能性を指摘した。

この量子ビット模型はブラックホールの熱的な性質を再現するものになっており,そこでは零エネルギーの輻射が重要な役割を果たすという。今回,この零エネルギーの輻射が量子もつれを共有できることから,ブラックホールが極めて高温な防火壁で覆われているという仮説が論理的必然でないことを明らかにすることに成功した。

その他関連ニュース

  • 東大,ブラックホール質量増加率が低いことを解明 2024年03月12日
  • 京大,超巨大ブラックホールの新プラズマ構造を発見 2024年03月04日
  • 京大ら,世界最大の超広帯域量子赤外分光を実現 2024年01月19日
  • NAOJら,ブラックホール近傍の星の年齢を推定 2023年12月05日
  • 東大,遠方宇宙に大量の巨大ブラックホールを発見 2023年12月05日
  • JAXA,X線観測でブラックホール周辺の物理構造解明 2023年11月09日
  • 【光フェア】オキサイド,量子もつれ光源を展示 2023年11月07日
  • 東大ら,ダークマターの典型的な重さを初めて測定 2023年09月12日