田中貴金属,銀ナノインクで曲がるタッチパネルを実現

科学技術振興機構(JST)は,産学共同実用化開発事業(NexTEP)の開発課題「金属細線を用いたタッチパネル用センサフィルム」の開発結果を成功と認定した(ニュースリリース)。

この開発課題は,産業技術総合研究所の研究成果をもとに,田中貴金属工業に委託して,同社新事業カンパニーにて企業化開発を進めていたもの。

タッチパネルは,スマートフォンから大型ディスプレーまで多く利用されている。また,ディスプレーは平面形状だけではなく,3次元曲面や曲がるディスプレーが発表されており,これらに対応できるタッチセンサーが求められている。

現在のタッチセンサーはITO(インジウム―スズ酸化物)を使った透明電極が主として使われているが,これは曲げに弱く,抵抗値が高いといった物性的問題から,フレキシブル化,大画面化への対応は限界があるとされている。

この問題を解決する材料として,金属細線を電極にするメタルメッシュ(MM)が注目されている。しかし,現状のMMの配線幅は太いため,近距離で使用するスマートフォンの場合,配線見えの問題がある。そのため,大型ディスプレー用途でしか普及には至っていない。

今回の新印刷技術では,撥液性のフッ素樹脂が塗布されたフィルムに,フォトマスクを介してパターン露光し,そこに金属インクを挿引することで配線を形成する。これは光により活性化されたフッ素樹脂表面に金属ナノ粒子が化学吸着されることで,一定膜厚の金属配線が形成される技術。

スマートフォンでも使用可能な微細配線を有するMMフィルムを低コストで製造可能にするために下記の開発を進め,従来方式に無いロールtoロール生産システムを構築した。

印刷の反応機構の解明,インクやフッ素樹脂の検討,大面積への均一な印刷方法などの開発を実施した。これにより微細配線(線幅2~4μm)の7~8インチセンサフィルムが作製可能となった。

センサパターンのデザイン(配線幅や形状)や配線の後処理方法により,見えない配線が開発され,顧客ニーズに対応した。これによりスマートフォンでも使用可能なMMフィルムが完成した。さらに20万回(半径2㎜)の折り曲げ試験に耐えうる性能も確認した。

各工程の装置開発とその条件検討により,ロールtoロール方式による製造方法を確立。線幅4μmのMMフィルム製造実験では,10mのロール長さにおいて95%以上の歩留まり達成を確認した。

この成果により,3次元曲面のディスプレーや屈曲可能なディスプレー等にも利用可能な高機能タッチパネル用センサーフィルムを低コストで製造することができる。

微細配線フィルムを全工程ロールtoロール方式により製造可能にした今回の成果は世界初であり,フレキシブル電子デバイス市場に向けた,プリンテッドエレクトロニクスの重要な技術革新だとしている。OLEDディスプレーやIoTデバイスの配線や電極などのエレクトロニクス分野はもちろんのこと,それ以外の抗菌フィルム・触媒用途・遮熱フィルム等の機能フィルム製造においても応用,利用が期待されるという。

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