東大ら,マルチフェロイクスに巨大ホール効果を発見

東京大学,理化学研究所の研究グループは,磁気秩序と強誘電秩序を合わせ持つマルチフェロイクスFe2Mo3O8,(Zn0.125Fe0.875)2Mo3O8において巨大な熱ホール効果が生じることを発見した(ニュースリリース)。

熱ホール効果は,縦方向に流した熱流が曲げられて横方向に温度勾配が生じる現象。通常の金属では電荷を持つ電子が磁場下で電磁気学的な力を受けて曲げられることによってホール効果が生じるが,電荷を持った素励起が存在しない絶縁体中では熱流は通常直進し,ホール効果が起こることは極めて稀。

現在までに,格子振動の素励起(フォノン)や磁性秩序相における磁気励起(マグノン)の熱ホール効果が特殊な物質で報告されていたが,熱流の曲がる程度を表す熱ホール伝導度はいずれも非常に小さかった。

研究では,磁気秩序と強誘電秩序を合わせ持つマルチフェロイクスFe2Mo3O8,(Zn0.125Fe0.875)2Mo3O8において熱ホール効果を観測し,熱ホール伝導度がこれまで報告されているものより一桁以上大きな巨大な値を示すことを明らかにした。

従来のようにフォノンやマグノンといった個々の素励起がホール効果を起こしているのではなく,マルチフェロイクスに特有の強い格子・スピン結合に由来した新しい機構のホール効果が起きていることが示唆されるという。

この研究成果は,マルチフェロイクスにおける磁性と誘電性が結合した新物性の開拓を促進させると同時に,磁性絶縁体における効率的な熱流制御技術の構築に寄与することが期待されるもの。

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