NIMSら,フレキシブル基板上に微細配線を形成

物質・材料研究機構(NIMS)のグループと,コロイダル・インクからなる研究チームは,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)若手研究グラント事業の支援を受け,線幅・線間1ミクロンの解像度で金属配線および薄膜トランジスタ(TFT)を形成する印刷技術を開発し,フレキシブル基板上にチャネル長1ミクロンの有機TFTを形成し,実用レベルの動作を確認した(ニュースリリース)。

機能性材料をインクに溶解し,印刷技術を用いて電子素子を作製するプリンテッドエレクトロニクスは,低コスト・大面積の新しい半導体素子形成技術として近年注目を集めている。この技術を使えばフレキシブルな基板にも電子素子を作成できるため,ウェアラブルデバイス等の新しいアプリケーションが可能になると期待されている。

しかし,従来の印刷技術では,配線や素子の線幅は数10ミクロン以上であり,実用化レベルの微細な素子を形成することができなかった。そのため,数ミクロン以下の配線を再現性良く作製できる印刷技術の開発が強く望まれていた。

今回,研究グループは,フレキシブル基板上に1ミクロンの金属配線を形成可能な印刷技術を開発し,微細な有機TFTの形成を行なった。印刷技術の原理は,波長200nm以下の真空紫外平行光(PVUV)を照射することで表面に微細な親水・疎水性パターンを形成し,金属ナノインクを親水性パターン上へ選択的に塗布するというもの。

PVUV光源として,ウシオ電機が開発した真空紫外平行光照射ユニットを用いることで,従来の光源と比較して大幅な微細化を行なった。金属ナノインクはコロイダル・インク製の常温導電性インク「DryCure-Au」を用いることで,素子・配線の形成をすべて常温で行nうことにも成功した。

その結果,熱によるフレキシブル基板の歪みが完全に抑制され,ミクロンオーダーの配線の正確な形成と積層が可能になった。この方法で形成したチャネル長1ミクロンの有機TFTでは,精度の問題から従来は不可能であったゲートオーバーラップ長の制御も完全に行ない,実用レベルの移動度0.3cm2V-1s-1を達成した。

研究グループでは今後,この成果を用いて実際のアプリケーションへの応用を目指していきう。開発したプロセスは生体に近い材料へも適用可能で,医療・バイオエレクトロニクス等の分野への応用も期待されるとしている。

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