JAISTら,最高強度のバイオ透明樹脂を開発

北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は筑波大学とともに,遺伝子組換え微生物を用いて生産されるシナモン類を原料としたバイオプラスチックの合成に成功し,これを用いた世界最高強度の透明樹脂を開発した(ニュースリリース)。

バイオプラスチックは,植物などの生物に由来する再生可能な有機性資源(バイオマス)を原材料とするプラスチックで,二酸化炭素(CO2)削減と廃棄物処理に有効であるとされているが,そのほとんどは柔軟で壊れやすいポリエステルであり力学強度に問題がある。このため用途は限られ,主に使い捨て分野で使用されている。

今回研究チームは,バイオプラスチックの材料として,堅い構造の天然物で香辛料の成分でもあるシナモン系分子に着目し,この1種であるアミノ桂皮酸をバイオマス原料を用いて大量生産する組換え微生物を新たに開発し,その生産効率を実用に近いレベルにまで改良した。

また,アミノ桂皮酸を塩酸塩化し高圧水銀灯で照射する方法だけでなく,N-アセチル化して光二量化させる手法も開発し,芳香族ポリアミドの2種類のトルキシル酸誘導体原料を,両方ともバイオマスから合成した。

これらをモノマー材料として用い,世界初のバイオ由来芳香族ポリアミドを得た。さらに,これらをキャスト法によりフィルム化して透明膜を得た。作成におけるいずれの工程の変換効率も95%を超え,微生物資源のロスもほとんど無い。

得られた高分子の構造はトルキシル酸という珍しい骨格のものであり,硬さと適度な変形性を併せ持つ「分子バネ」のようなはたらきを示し,優れた力学物性を得ることができる。

一般に透明樹脂の力学強度を高めることは困難とされており,添加物の使用無しにはガラスの力学強度を超えるのは難しい。一方,今回開発したバイオプラスチックは透明度が極めて高く,汎用型の透明樹脂であるポリカーボネートと同等の透明度(87%:波長400nm)を示すだけでなく,407MPaというポリカーボネートの6倍に相当する高い力学強度を示す。

これはガラスの力学強度(100-150MPa)を遙かに超えるものであり,ガラス代替材料としての応用が期待できる。さらに,耐熱温度も250℃程度もあり,工業用プラスチックとして幅広い用途が期待できる。特に,自動車などの輸送機器の軽量化や新たなフレキシブルパネル材料などへの応用が期待され,大気中の二酸化炭素の削減に貢献できるとしている

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