NEDOら,ペロブスカイト太陽電池で18%超を達成

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と物質・材料研究機構(NIMS)は,ペロブスカイト太陽電池の標準面積(1cm2)のセルで,世界で初めて18%を超えるエネルギー変換効率を達成した(ニュースリリース)。

ペロブスカイト太陽電池は,廉価な材料で構成されており,塗布という簡易な方法で大量生産が可能であることから,製造コストを大幅に下げられる可能性がある。そこでNEDOは太陽光発電開発戦略で掲げる発電コスト目標7円/kWhを実現する太陽電池として「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトを推進している。

近年,この塗布プロセスで製造可能なペロブスカイト太陽電池の開発は世界中で活発に行なわれており,20%を超えるエネルギー変換効率(セル面積0.1cm2程度)が報告された例もある。しかし,面積の小さいセルでは測定誤差が大きく,他の太陽電池との性能比較はできない。

こうした中,NEDOとNIMSは,ペロブスカイト層の高品質化や太陽電池構造の高性能化の最適化を行ない,1cm角のセルにおいて世界で初めてエネルギー変換効率18.2%を達成した。

今回の研究では,太陽光の吸収効率を上げるためにペロブスカイト材料における2種類のカチオンの混合比を最適化し,さらに一部ヨウ素を臭素に置き換えることによって,ペロブスカイト層において欠陥が少なく大きな結晶粒子を得ることができた。これにより,光照射で形成された電子とホールを効率よく取り出すことが可能になり,短絡電流密度を21mA/cm2以上に向上させることができた。

さらに,ペロブスカイト層,電子輸送層,電子抽出層などの材料と膜厚の最適化に関する検討を行ない,太陽電池内部の電気抵抗を低減することで,太陽電池の曲線因子を2割程度上げることに成功した。

上記成果をベースに作製された1cm角の太陽電池について,産業技術総合研究所(AIST) 太陽光発電研究センターで測定した結果,変換効率18.2%が確認された。

今回,面積1cm2のセルにおいて変換効率18.2%が実現できたことで,プロジェクトの目標である変換効率20%超が視野に入った。そこで,今後この成果を基に,高性能の材料の組み合わせや各層の膜厚の最適化などの検討を行ない,今年中に1cm角のペロブスカイト太陽電池で変換効率20%を目指す。

また,民間企業との共同で,これらの成果の実用化研究を積極的に推進することにより,従来型火力発電並みのコスト(7円/kWh)を実現し,さらなる太陽電池の普及に貢献するとしている。

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